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平等には出来ない人 6

「なぁ…この絵ちょうだい?」 「え?で、でも…ただの試し書きですが…?」 彼の目には果たしてこんなに良く映っているのだろうか。 イヴィトは苦笑しながら、欲しい、と彼に訴えかけるとヴェネッタはまた顔を赤くしながらノートのそのページを綺麗に切り離し始める。 「そ、そ…そこまで言うのなら…? で、でもなんかもうちょっと綺麗に描けばよかったですねぇ……」 「いーの。これが欲しいんやもん」 「じゃあ……はい……」 「やった。部屋に飾ろっかな?」 「え、い、いやそれは流石に恥ずかしいというか…!?」 ヴェネッタから絵を受け取って、なんだか色々な事を想像して泣きそうになってしまった。 あと1年も経てばヴェネッタはこの学園を卒業してしまって、もうこんな風に一緒にいる事は出来なくなるのだろう。 イオンは彼を社員にしたくてたまらないようだったけど、そうだとしてももうほとんど関わりがなくなって 自分も卒業してしまったら、島に帰らなければならないから。 そうしたらきっと、会えなくなるのだろう。 ずっと友達ではいてくれるかもしれないけど、こんな風に近くにいる事はもう出来ない。 まだ先の事のはずなのに、イヴィトはなんだか凄く切なくなってしまうのだった。 「イヴィト…殿……?」 ヴェネッタは絵をじっと眺めていたイヴィトを怖々と伺ってくる。 今考えても仕方がない事なのに、と思いながらもイヴィトは彼を見つめた。 「ありがとう、ヴェネッタ先輩」 彼の頭を撫でて、イヴィトは貰った絵を大切に自分のノートに挟んでおいた。 この絵があったら今日のことをきっと忘れないでいられるだろうとかいう、そんな醜悪な魂胆だった。 この絵を描いてくれた時だけは、彼の頭の中に確かに自分がいた証拠だから、と。

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