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剥奪 5

ふ、と部屋に置いてあった水色の本棚が目に入った。 今まで幾度となく救ってくれた“大天使”がいうには、 産まれた時点で全ての存在が愛されているはずだ。 それを信じているけど、やっぱり信じていたかっただけで本当では、そんな事はないのかもしれない。 そんなはずないのに、そうだと思ってしまいたくなる。 嘆いたって何も変わらないのに。 なのにどうしてこんなに苦しいのだろう。 自分はどうしたらいいのだろう。 「……、だ、だめだ…落ち着け自分…2000万なんて…今までと同じ支払いだとしたらたった400ヶ月……! い、今までに比べたらこんなの無いも同然…!そうそう…!平気平気…!」 ヴェネッタは眼鏡を押し上げて腕で涙を拭って泣き止もうとした。 死ぬような事じゃない、 そうだ、自分で命を断つのが一番罪深いのだから。 大天使だってそう言ってるし。 「平気…平気………」 望まれて、産まれてきているはずだから。 愛されて、いるはずだから。 『お前の所為だ!お前さえいなければこんな事には……っ!』 父の言葉が蘇って、ヴェネッタは激しい頭痛と吐き気を感じて口元を片手で覆った。 「…っ、……ふ…」 ヴェネッタは床を這うようにしてトイレへと駆け込んで、そこに胃の中身をぶちまけてしまった。 最悪の思い出しかないあの忌々しい屋敷を売り払って、たった400ヶ月頑張るだけ。 そしたらきっと、今度こそ、 普通が待っているはずだ。 これはきっと罰だ。 テガボ家をめちゃくちゃにして不幸にした罰。 だけど後もう少し頑張りさえすれば 自分の罪は、今度こそ清算されるはず。

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