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傷付けたって 1
『なんだぁ?よく頭ぶつけてんな…
ああ…目があまり良くないのか……ッチ、面倒なところだけあいつに似やがって…
ほら来い、眼鏡くらいは買ってやる…』
後にも先にも、父と出かけたのはあの一回きりだった。
あの時は、自分だって少しくらい、愛されているんじゃないかと思った。
でもそれは
嘘
だったのかな。
そうだとしたら、一体自分は何のために生まれて来たというのだろう。
「…ん……」
朝日が瞼に刺さって、ヴェネッタはうっすらと目を開けた。
身体が重くて頭が少し痛い。
心も凄く重くて。
目が覚めてしまった事に少し絶望してしまいながら、ぽとりと一粒雫が頬に落ちていく。
呆然とただ身体を横たえて、ぼやけた視界を眺めていた。
段々意識がハッキリしてくると、気絶する前の出来事を思い出す。
2000万の罰金を払う事になって、それで凄く動揺して。
確か、イヴィトが部屋を訪れてくれた。
そんな彼に、凄く良くない事を言った気がする。
やってしまったという後悔がじわじわと身体の内側を蝕んで、ヴェネッタは嗚咽するように吐息を吐き出した。
嫌われてしまったかな。
そう思うと凄く悲しくなってまた余計に泣いてしまいそうだった。
「はぁ……」
ヴェネッタはため息を溢しながら起き上がろうとした。
しかし身体が縛られたように動かなくて、思わずドキリとしてしまう。
金縛りとかいうやつだろうかと恐ろしくなっていると、お腹の辺りに何かが巻き付いているような感覚がある。
「ん……ヴェネッタ…先輩……」
頭のすぐ後ろで声がして、ヴェネッタはびくりと身体を強張らせる。
「…え……?…エ…!?」
どうにか後ろを振り返ると、そこにはイヴィトがいて
何故か抱き締められているらしいと気付いてしまった。
彼は眠そうに唸っている。
「もう少し……ねかしてもらえんやろか……このまま…」
ぎゅうっと強く力を込められながら、ぼそぼそと彼が首の後ろで呟いていて、そのちょっと低い声が直接身体に響いてくるようで
ヴェネッタはばくばくと心臓を騒がせながら固まっていた。
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