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傷付けたって 6

「…先輩は…いつもそうやって正しくあろうとするなぁ…」 イヴィトはいつもみたいにちょっと困ったように微笑んでいるようだった。 「酷いこととは…思ってへんし…俺はヴェネッタ先輩に傷付けられたりなんてしとらんよ… 寧ろ俺は嬉しかった。先輩がしんどい時一緒に居られて…思ってる事教えてもらって… 1人で知らない所で泣かれるよりは全然… …だから、…謝らんで」 イヴィトの紅茶色の瞳は朝日でキラキラと輝いていた。 それはどこか切なげにも見えたけど。 「まぁ…俺が無理矢理おったんやけどな… 先輩のこと好きやから、つい構いたくて」 いつもイヴィトは何も言わなくても、悲しくて消えてしまいそうな時に一緒にいようとしてくれる。 ヴェネッタはどうにか笑おうとして目を細めた。 「…あり…がとう……イヴィト殿…こんな自分に…」 何故そんなことをしてくれるのかは分からないけど、それが 好き、ということなのだろうか。 今までそんな事をしてくれた人が居なかったのは、自分が好かれたことがなかったからなのかもしれないけど。 「え…わ、わ……?」 イヴィトはヴェネッタを急に抱き上げてきて、人形みたいに持ち上げられてしまう。 いつもちょっと見上げる位置にある彼の顔が近くにあった。 「なぁヴェネッタ先輩…死なんで良い方法一緒に考えよ? 先輩が頑張れんでも俺が頑張るから」 持ち上げられながらじっと見つめられて、その顔が少しずつ滲んでいってしまう。 イヴィトは、大事に思っていると言ってくれた。 本当はそれだけで何も要らなくて、生きる理由なんて、それで充分だ。

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