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手放すために 3
玄関を入ってすぐのホールには祖父の立派な肖像画が飾られているが、今は切り刻まれてその顔もよく分からない。
廊下には酒瓶が散乱している様はやっぱりヴェネッタの記憶の中の家と変わらないようだった。
「なんか……闇が……」
「あはは…き、汚いですよねぇ…学園に来るまでこれが普通なんだと思ってました…」
一階は壁紙も剥がれていたり、ガラス窓が割れて風が入ってきていたりほとんど廃墟と言っていいほど荒れているようだった。
かつて祖父が置いていたのであろう立派そうなツボとか彫像などもあったが、床に倒れて割れていたり
蜘蛛の巣と埃で凄い事になっている。
「でもこの辺とか結構高そうじゃね?修理すれば売れるってー」
「この絵も有名な画家のものですよね…少し綺麗にすれば…」
メインホールに乱雑に置いてある調度品をスーやレンシアは眺め、前向きなコメントを残してくれている。
自分にはあまりない発想だったので、そんな事もあるのかと呆然と見つめてしまうヴェネッタだった。
「…本当に売っちゃっていいん…?ヴェネッタ先輩」
家の中はまるで時が止まっているみたいだった。
真ん中に置いてある大きなテーブルで父はいつも酒を飲んでいた。
近付けばこのよく声が響く大広間で一晩中怒鳴られたりするので、いつも物陰に隠れて、それでもその寂しい背中を見ていたりしたものだ、とヴェネッタは思い出していた。
「…あってもしょうがないですし…
それに…自分にとっては…家も…この家にあるものも…見ていたらちょっと苦しくなるので……」
ヴェネッタはそこまで言ってハッとなりイヴィトの顔を見上げた。
彼は複雑そうに眉根を寄せている。
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