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心に置くもの 1
それからみんなの協力を得て、屋敷内の家具や調度品は外へと出され散乱していたゴミも片付けられていった。
修理出来そうなものや修繕出来そうな箇所はヴェネッタも魔法などを駆使して直していったし、イオンやイヴィトも守護の魔法で手伝ってくれた。
1階は結構荒れ果てていたが、2階は放置されているというだけでゴミなどはあまり散乱していなかった。
かつて家族が暮らしていた部屋は、ある日突然住民が消えてしまったようにそのままになっているようだった。
父親の部屋も、顔も知らないもう1人の父親の部屋も。そして、兄の為に用意されていた部屋も。
ヴェネッタは子どもの頃、自分の部屋以外は怖くて近付けなかった。
自分が入ってはならない部屋だとも思っていたから。
だからどうなっているのかは今日初めて知ったようなものだったので、何だか不思議だった。
兄の部屋は特に、小さな赤子用のベッドが置かれ
使われる予定のないままのおもちゃや洋服がそのまま丁寧に並べられていた。
「……」
ヴェネッタは初めて足を踏み入れた兄の部屋で思わず立ち尽くしてしまった。
「先輩?」
部屋の入り口で棒立ちだったヴェネッタの背中に心配そうな声がぶつかる。
ヴェネッタは小さく息を吐き出しながら、部屋の中に恐る恐る足を踏み入れた。
「ここ…兄の部屋です…自分が産まれる前に死んじゃったらしくて…会った事ないんですが…」
他の部屋とは違って壁紙も天井も綺麗に保たれていて、父親もここでだけは暴れなかったのだろう。
愛されていたんだろうな。
そんな事を思うと、何だか胸の中がざわざわとして変な気味の悪い感覚が押し寄せて来るようだった。
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