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心に置くもの 3

「先輩は…何も悪くないってずっと言ってるやろ…」 イヴィトの声に、ヴェネッタは窓枠を握り締める。 何だか、胸の中に滞留している何かが這い上がってきて涙が溢れて来そうだったから。 「お兄さんや…ご両親の事は、悲しい事件だったんやなって思うけど… …でも、ヴェネッタ先輩が悪いわけやない… 寧ろ先輩は…文句の一つも言わずにこうやってみんなが放置していった後の片付けをやってるやん 家に対しての責任まで1人で背負って…」 お前さえいなければ、と何度父に言われたか分からない。 ヴェネッタはその事を思い出して、両手に力を込めながら俯いた。 「そうでしょうか…… 自分は…、今もなおこうやって…父から何もを取り上げ続けている気がしてならない… …幸せな家庭も家族も…仕事も、爵位も…、今度は屋敷だって…自分さえいなければ…父は……」 「先輩…」 「……じ…自分は、ちゃんと儀式で産まれたわけじゃないんです… きっと望まない子…だったのでしょう 本当は邪魔で…、…いない方が良かった…… ……それは…わかってるけど……、父にとって煩わしい存在だったって…」 分かってはいたけど。 殴られる度に死にたくないと思った。 死にたくなくて父に見つからないように逃げ隠れて。 言われる言葉に、耳を塞いで。 「…お金さえ…払えれば、払い続けていたら…、生きていられると、本当は心のどこかで思っていたんです… 自分の名前で借りた金で…、父が少しでも助かったのなら……っ、産まれて来た意味が…あるのかもしれないなんて思っていたんです… 父は自分に、いなくなればいい、って言っていたけど…それを…う、受け止められなくて… ……狡いですよね……自分は…」 喋りながら、ヴェネッタは体に力が入らなくなってその場にへたり込んだ。

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