110 / 138
心に置くもの 5
イヴィトは叫ぶと、小さなベッドを掴んで窓から放り投げ始める。
「え、あ…!?」
ヴェネッタが呆気に取られている間にも、イヴィトは綺麗に並べて置いてあったおもちゃや服やタンスを全て窓から投げ捨てている。
「キャァ!?!なんか降ってきた!?」
「ちょちょちょ!?雑にも程があるってー!」
下からも阿鼻叫喚が聞こえるが、イヴィトは構わずに部屋の中をどんどん空っぽにしていった。
「ヴェネッタ先輩が生きるために必要なものなんて、ヴェネッタ先輩しかおらんやろ!!
誰の許可も、罰なんて、見返りなんていらん!!!
死にたいなんて思わせてくるものなんて全部必要ない!!」
空っぽになった部屋で、イヴィトが怒鳴り散らしていた。
この家では怒鳴り声なんて毎日聞いていた。その度に、早く消え失せろと言われているようで。
だけど。
ヴェネッタはとろとろと泣きながら呆然とイヴィトを見上げた。
「生きたいと、思わせてくれないものなんか…心に置くな……」
彼の頬にも涙が伝っていて、イヴィトはそれを乱雑に拭っている。
窓から入って来た光で、涙で濡れた彼の瞳がキラキラと光っていた。
綺麗なものだなと思った。
怒っているのに、こんなに怒鳴られたのに、どうして怖くないのだろう、と。
ともだちにシェアしよう!

