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心に置くもの 7
「辛かったね……」
イヴィトの大きな掌に頭を撫でられて、ヴェネッタはその胸に顔を埋めながら泣きじゃくった。
「…先輩は…大変な中1人でよう頑張ってた…それだけやんか…
誰も傷つけてないし…奪ってもない…」
彼の言葉にヴェネッタは頷きながら嗚咽して、あり得ないくらい涙が出て来てしまっていた。
誰にも言えなくて、どこにもぶつけられなくて。
大天使が引いてくれた細い細い糸を見失わないように必死に辿って。
「……先輩の気持ち、全部あっていいことや…
思っちゃいけないことなんて一つもない…
誰かを恨んだっていいし、辛いと思ったっていい…愛して欲しいなんて、誰だって思う事や……卑しくなんかあらへん…」
「…き…きらいにならない……?」
「なるわけないやろ…寧ろもっと好きになったよ…
こんな目にあってても、誰の所為にもしようとせずにいた…そんな優しい先輩が…」
イヴィトはヴェネッタの頬を撫でながら微笑んでくれた。
彼の纏う空気はまだちょっと熱くて、だけど全然怖くなくて。寧ろ安心できるような気がした。
「先輩はいい子や…俺もいつも救われとる。
そんな先輩の優しい気持ちを、少しでもいいから自分に向けて欲しいと思う…」
「自分…に?」
「そうや…誰の所為にもせんでいい…だから、自分の所為にもせんでいいんよ…」
彼はそんな事を言っていてヴェネッタは、今まで考えたこともなかった、と思いながらもその一方で全然関係のない事を感じてしまっていた。
ああ、そっか。
愛してもらうって、こういう事だったんだ、と。
自分の為に本気で怒って泣いて、いつもこうやって見てくれて。
困っていたら助けてくれて、泣いていたら抱き締めてくれて。
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