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贅沢な選択 4

断片的にしか分からないが 殴られていた、とか、どうやら酷い言葉も吐かれていたようだ。 イヴィトは両親を尊敬していたし、手を上げられた事なんて一度も無かった。 だからヴェネッタが如何にして凄惨な幼少期を送って来たかは想像することしか出来なくて、きっとそれは経験しなければ分からないくらい辛いものなのだろうから。 「…もう、気にせんでええって。 ほら…俺島から出たことなかったし…学園の近く以外で他の街とかあんま行ったことなかったから色々経験出来て嬉しいし」 イヴィトはいつまでも落ち込んでいそうなヴェネッタに近付いていって隣に腰掛けた。 「……イヴィト殿の住んでいた場所はどんな…?」 「結構全然違うんよ?田舎というか…まずホテルなんてあれへんし レストランも一軒だけやし、本屋と雑貨屋と洋服屋が一緒なんやで。 魔法使いも俺達しかおらんからなぁ」 イヴィトの住んでいた島は、漁業と農業が盛んでほとんど自給自足していると言ってもいい程で都会の生活とはかなりかけ離れている。 もちろん定期便として船がやってくるので、内地の情報も入ってくるにはくるけど実際生まれてから死ぬまで一度も島から出たことのない島民だって少なくはない。 「まぁでも良いところよ。海が綺麗で、島の人もみんないい人や」 「海…か…」 「うん。今度帰る時、ヴェネッタ先輩も連れてったるよ」 「…え…、え?い…良いんです…か…?」 「もちろん。先輩が嫌じゃなかったらやけど ふふ。変換の魔法なんて弟達は見たことあれへんからきっと驚くやろなー」 ヴェネッタは驚いたような顔をしていたけど、やがて頬が赤く染まっていく。 至近距離でその顔はまずいなぁと思いながらも、イヴィトは彼の頭を撫でた。

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