123 / 138

あなたのもの 1

まるで頭を殴られたみたいだった。 涙を浮かべた瞳で、赤く紅潮した顔で、どこか上擦った声で。 そんなのは贅沢でもなんでもなくて、と。寧ろこちらの方が贅沢であってと説明したいくらいだったけど。 イヴィトは顔を隠してしまっているヴェネッタの腕を掴んで退けて、噛み付くように口付けた。 「ん、っ…」 いつも盗み見ていた唇を喰んで、眼鏡がカチカチと当たっても気にせずに無我夢中で貪った。 いつも必死で、その感触を味わう余裕なんてなかったから。 深く口付けてもヴェネッタは震えながら大人しく応えてくれていた。 「…ぅ…、っ、ん…」 その唇を舐めて、隙間から舌を口腔に侵入させた。 彼の舌は驚いたように引いていったけど、それを追いかけて捕まえて絡めると ヴェネッタは怖々とイヴィトの胸に触れてきた。 嫌だっただろうかと一瞬戸惑ったけど、その手はぎゅう、と服を掴んでいる。 「は…ぁ…、ぅ……ん」 唇の隙間から漏れる声がどんどん甘くなっていって、 イヴィトはただでさえ明らかに冷静さを欠いているのにますますそうなりそうだった。 ホテルに備え付けのパジャマは薄っぺらい生地で、上から撫でてもヴェネッタの身体が汗ばんでいるのが分かった。 口付けながら片手でボタンを外していくと、そわそわと足が動いていて その間にイヴィトは身体を滑り込ませる。 「あ…、っ…」 素肌を撫でると、やっぱりしっとり濡れていて 石鹸の香りの向こう側にヴェネッタの香りを感じてしまう。 なんでこんなに甘くて脳をくらくらさせるような香りなんだろう。 本当に同じ人間なのだろうか。 本当は人間が触れちゃいけないような、天使か何かじゃないのだろうか。 そんな風に疑ってしまうくらいだった。

ともだちにシェアしよう!