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お祖父様 1
翌日、再び訪れた屋敷は随分とがらんとしていて静かだった。
家具やゴミもほとんど運び出され、煩く騒ぐ連中もいないし
イヴィトとヴェネッタの2人になると各々黙々と作業してしまって実に捗ってしまう。
埃や蜘蛛の巣を払い、残っている壊れたガラスの破片を拾い集め、昼頃にはテガボ家の屋敷はほとんど“完璧な空き家”になっていた。
「…よし。後はこれだけやなぁ…」
2人は入り口入ってすぐの玄関ホールに飾られた、巨大な肖像画を見上げていた。
それはこの屋敷を建てたというヴェネッタの祖父が描かれているらしいが、刃物でめちゃくちゃに切り刻まれており顔もよく分からなくなっている。
ヴェネッタはその非常に縁起の悪そうな絵を無言で見上げていて、イヴィトはその横顔をつい見つめてしまった。
銀色に光る長い睫毛を揺らしながら、澄んだ青い瞳は穢れを知らなそうに輝いていて、白い頬を晒している彼は
こんな荒れ果てた屋敷で育ったとは思えないくらいだった。
だけど表立って見えていないだけで、その心には誰がどうやっても癒せないような傷を負っているのかもしれない。
「……これで良かったような気がします…、
自分には貴族やらなんやらはさっぱりで…向いてないと常々思っていましたから…
そもそも…将来の事を考えられる余裕もありませんでしたからなぁ…」
ヴェネッタはそう言って苦笑しており、確かに貴族のドロドロした世界を生きるには彼は些か綺麗すぎるようにイヴィトにも思えていた。
「正直…これからどうなるかもまだ全然分かりませんが…
ここが満額になったとしても2000万には届かないし…、まぁ…今まで通りぼちぼち返していかねばですね」
彼はいつも通り当たり前の事のように言いながら、肖像画へと近付いていった。
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