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10年前の鳥籠と、今の鳥籠

*注記* こちらは本編に載せなかった美月(みつき)の過去話(10歳くらい)です。 麗彪(よしとら)に逢う前の美月がどんな生活をしていたか書いたものですが、暗いので・・・10年後(20歳くらい)の美月も書き足しました。 【美月side】 おかあさんが、おでかけする。 おしごと、行くんだ。 ぼくは、おせんたくがおわって、おそうじして、おへやのすみっこにすわる。 おかあさんがおでかけするの、じゃましちゃだめだから。 じっとして、うごかないで、こえもださない。 おかあさんがでてく。 がちゃんって、かぎがしまるおとがした。 げんかんには、行っちゃだめ。 どあにさわったら、ほうちょうで、ゆびをきるからねって、おかあさんがいったから。 ぼくは立って、おしいれにしまっておいた、えほんをだす。 おかあさんがずっとまえにくれた、えほん。 どれも、なんかいもよんだ。 どうぶつのおいしゃさんのえほん、くるまのえほん、おうじさまとおひめさまのえほん・・・。 おかあさんがやさしいときにくれて、なんかいかよんでくれた。 そのときのことばをおもいだしながら、かいてあるもじをよむ。 だから、ひらがなはよめるよ。 あと、なんこか、しってるかんじもある。 「おひめさまは、おうじさまと、しあわせにくらしました」 しあわせって、なんだろ。 よめるけど、しあわせがなんなのかは、わからない。 ちかいのきすして、けっこんして・・・ずっとずっといっしょにくらす、のかな。 ぼくは、ずっとずっと、このおへやで、くらすのかな。 おかあさんと・・・。 「ぃたい」 おかあさんにぶたれて、ころんじゃって、ぶつけたうでとあしが、いたい。 でも、さわらなければ、だいじょおぶ。 血もでてない。 うごかさなくてもいたいときは、ねつがでて、すごくくるしいから。 血がでたり、ねつがでたとき、おかあさんはすこしあとで、ちょっとだけやさしくなる。 ばんそうこ、くれたり、ねてていいって、いってくれたりする。 でも、つぎの日はちゃんとおきて、おせんたくとおそうじ、するの。 おかあさんが、くろくておおきい、ごみぶくろ、だすから。 これに入れるよって、いわれちゃうから。 「おうじさま」 おひめさまをたすけるために、わるいまほうつかいとたたかった、おうじさま。 かっこいいな。 くるまもかっこいいけど、おうじさまは、もっとかっこいいんだろうな。 おうじさまがいたら、ぼくのことも、たすけてくれるかな。 わるいまほうつかいはいないけど、ぶたれないよおにしてくれるかもしれない。 「・・・でも、きて、くれないよね。ぼく、おひめさまじゃ、ないもん」 ─────── あの時は、幸せの意味も知らなかったし、王子様が本当にいるってことも知らなかった。 おかあさんが悪い魔法使いより恐いってことも、毎日泣いてたのが、さみしくて悲しいからだってことも、わかってなかった。 「ねえ、ぼくの王子様」 「なんですか、俺のお姫様」 お仕事してる手を止めて、ぼくの方を見てくれる王子様。 絵本よりもっと、想像してたよりもっともっと、かっこいい。 こんなにかっこいい王子様が、ぼくの旦那様、ぼくの麗彪さん。 顔が勝手に、にこにこしちゃう。 「かっこいいね」 「可愛いね」 そう言って、ぼくを抱き寄せる麗彪さん。 そのままお膝の上に座らせてくれる。 「まだお仕事中でしょ?」 「美月は終わったんだろ?なら俺も終わり」 もお、ぼくが先にお仕事済ませると、麗彪さんもいっしょに終わらせちゃうの、だめなんだけどなぁ。 駿河(するが)さんが気付いたら、また怒られちゃうのに。 「ちょっと休憩したら、続きやってね?」 「えー・・・」 麗彪さん、だだっ子になっちゃった。 ぼくの肩に顔をぐりぐりして、甘えてる。 「ふふっ、ぼくの王子様かわいい」 「可愛いのは俺のお姫様なんだが?」 ぼくはお姫様じゃない。 じゃないって、思ってたけど、麗彪さんのお姫様になれてほんとに、本当に、幸せ。 ぼくからも、麗彪さんにぎゅうーってしちゃう。 「ほら可愛い」 「ぎゅうしたかったからしただけなのに」 ・・・あ、ちゅーもしたい。 でもなー、ちゅーしちゃったら、たぶん麗彪さん、お仕事の続きしてくれなくなる。 それは困っちゃう。 ぼくも、駿河さんも。 「ちゅーしてくんねぇの?」 「・・・んもぉ、なんでちゅーしたいのわかっちゃったの?」 バレちゃったから、ちゅーしちゃおうかな・・・。 「麗彪さん、美月くんの邪魔しないでくださいっていつも言ってますよね?」 あ、駿河さんに気付かれちゃった。 「俺が悪いんじゃないぞ、今回は」 「ぼくが先に麗彪さんのじゃましてしまいました」 「美月くん、もう終わったんですか?さすがですね〜。麗彪さんも見習ってくださいよ」 「結局俺が悪いのかよ」 あれ、麗彪さん悪くないのに、悪いみたいになっちゃった。 ごめんね、ちゅーで許して?

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