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Letter from the Hour Hand

もうすぐ工事が終わる。 俺に繋がってる歯車の試運転が始まってるから、振動でわかるんだ。 お前はもう、飛び回りたくてうずうずしてるよな。ははは、わかってるって。 また昔みたいに、ぐるっと回って景色を見たいんだもんな。楽しみにしてるその顔、可愛くて、好きだよ。 だけどなぁ。 本音を言うと、俺はもう少しだけこのままお前を抱きしめていたい。 工事中の一年ちょっと、あっという間だった。話はつきなかったよな。 抱きしめて、キスして、眠って、 起きたらお前の頬をつねったりして。 お前が「人間みたいにケンカしてみたい」って言うから、頑張ってみたんだけど……結局、俺たちケンカはできなかったな。 言い合う前に、どっちかが笑っちまう。 泣き合うこともできないけど、その分、くすぐったくなるほど笑って、どうしようもないくらい仲が良かった日々が、胸の奥でいまも温かい。 「いつかケンカしよう」って言って眠っていくお前の額に、そっとキスをしていたの、知ってたか? 俺は泣くことはできないけど、泣きそうな気持ちなら、あのとき初めてわかった気がした。恥ずかしいから言わないけどな。 長針。 このあと、お前はきっと大きく伸びをして、また文字盤を飛んでいくんだろう。 そのあと……また俺の腕の中に戻ってきてくれるのか? 次に重なるのは、ほんの一瞬だけかもしれないけど、またお前の針先は、迷わず俺の方へ向かってきてくれるだろうか。 お前は知らないだろうけど、重なる直前、俺に合わせてくれているみたいに、一瞬間があくんだ。 そんな小さなことでも知れることは、俺にとってどうしようもないほど嬉しかった。 だからな、長針。 たとえ時間が動き始めても、たとえまた声の届かない40分がきても俺はずっと、お前を待ってる。 動いてる時も、止まってる時も、 どんな時間でも。 お前が俺のところに戻ってきてくれる限り 俺は、お前を抱きしめるよ。 これから何度でもお前を迎えにいく。 重なるたびに、同じくらい愛おしくなる。 そしてそのたびに、また恋をする。 だから…そうだな、このままずっと、 二人で恋をしようぜ。 end

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