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生産職を舐めるなよ、勇者め
魔王が倒されたことはわざわざ知らせるまでもなかった。空の明るさだけでも、全く違う。勇者パーティは行く先々で人々に歓迎され、祝われ、感謝された。
祝宴と移動、その繰り返しで、僕たちはゆっくり休むこともできなかった。僕がカナタと二人きりになる機会はなくて、カナタがここに残った理由をしっかりと詳しく聞くことができていない。もちろんいかがわしい物を入手することもできていない。
どうにかリーンダール王国の王都に辿り着いた時、僕たちはぼろぼろに疲れきっていた。アーロン副騎士団長が、周囲に「勇者様を休ませるべきだ」と訴えて、休暇をもぎ取ってくれた。
国王陛下との謁見やら凱旋パレードやら祝勝会やら、面倒くさいイベントが残っている。その前に何も予定がない日が数日確保できたのはありがたい。
カナタはあてがわれた部屋で、気絶するかのように眠ってしまったらしい。僕もベッドと仲良くしたかったけれど、重たい体を叱咤して、知人に会いに行った。
訪ねたのは城下町の小さな薬局だ。
「アウリール、いる?」
声を掛けても返事はなくて、僕は勝手に奥の部屋へと入り込んだ。
「おーい、アウリール?」
「んん……何? 誰? なんか用……?」
出てきたのは金髪の痩せた男。僕の友人で薬師のアウリールだ。
「あのさ。ちょっと頼みがあって」
「……え、あれ。キース? 勇者様と旅に出たんじゃ」
「もう終わったよ。帰ってきたんだ。ちゃんと外見たか、アウリール? 空の色違うぞ」
アウリールは「そうなの?」と首を傾げた。こいつ、一体何日外に出てないんだ。カーテンも閉めたままのようだし。魔導具で明るいけどな。
「魔王を倒したってこと?」
「そうだよ」
「そっかぁ。すごいね」
アウリールはほわほわと浮世離れした雰囲気の、ちょっと心配になるような人間だけど、薬師としての腕は確かである。
「それで、キースが私に頼みって?」
僕は恥を忍んであるものを頼んだ。
「……用意できるかな?」
「もちろん。任せて」
休暇二日目。僕は意を決して勇者カナタに会いに行った。
「キースさん。来てくれたんだ」
「今大丈夫か? 用事とか、誰か来るとか……」
「大丈夫」
「あのさ。カナタが日本に帰らずここに残ったのって……僕が居るからって、どういう意味?」
「わからない?」
わかっていると思う。たぶん。だけど。
「ちゃんと聞かせて。カナタの口から聞きたい」
カナタはベッドの縁に座り、僕を膝の上に乗せた。包み込むように抱きしめられて、熱いくらいの体温を感じる。
「俺、キースさんと離れたくない。恋人になりたい。ずっと一緒に居たい。だからこの世界に残るって決めた」
「そう……でも、後悔しないか?」
カナタが僕の髪を指で梳く。
「そんなの、先のことはわからないよ。でも、日本に帰ってたら、間違いなく後悔してた」
それに、と耳元に吹き込むように囁かれる。
「まだご褒美もらってないから。ね?」
「……そうだな」
僕は魔法で、部屋全体に侵入禁止の結界を張った。
どちらからともなく唇を重ねた。久々のキスがたまらなく気持ちいい。
「キースさん、好きだよ。家族や故郷を捨ててまで、なんて、重いかもしれないけど……」
「僕を選んでくれたんだろ。嬉しいよ。ちょっと申し訳ないけどな。よく頑張ったな、カナタ」
「……だって、ご褒美欲しかったし」
「それなんだけどさ。僕、全然準備ができてなかったんだよ。カナタの、でかいし……たぶんすぐには入らないだろうなって」
カナタがわかりやすくしょげた。
「そう、だよね……いや、いいんだ。無理しなくても。すぐじゃなくていいし、なんなら、どうしても挿入しなきゃいけないわけでもないし……」
カナタのこの顔。おやつをもらえなかった犬みたいだ。可愛いな、僕の勇者様は。
「そもそも、キースさん小柄だし。腰もこんなに細いのに無理させるわけには」
「カナタ」
俺はカナタの言葉を遮って、頬を撫でた。
「勘違いしてるな? 僕は『準備ができてなかった』って言ったんだ。過去形だよ」
「……そうなの?」
「昨日、知り合いの薬師に会ってきた。薬を作ってもらったんだ」
「……薬?」
「そ。局所的に効く筋弛緩剤の弱いやつ」
「それって……」
「その薬を使えば、すぐに挿入できるってこと」
服越しにそっと股間を撫でてやると、カナタが顔を真っ赤にして狼狽えた。
「いや、でも、そんな……そこまでしなくても」
「なんだよ。ご褒美いらないの?」
「欲しいよ、欲しい。でも薬って。副作用とか」
「しばらくちゃんと閉じなくなるかもなぁ」
「ええっ」
いや、冗談なんだが。
「どうする? 結界も張ったし、薬は持ってきてるけど」
カナタは「そこまでしなくていい」とか「ゆっくり慣らせば」とか「キースさんこんなに細いのに」とか、もごもご言って躊躇った。
僕はなんだかちょっと苛つき、カナタの顎を掴んだ。
「うるさいな。準備してきたって言ってるんだから、ぐだぐだ言わずに抱けばいいだろ」
「いや、でも」
「でも、じゃない。何が不満だ。据え膳だぞ?」
「だって。俺初めてだし、加減なんてできる気がしないし、怪我とか痛い思いとかさせたくない」
「僕がそんなに簡単に壊れると思うのか?」
「だって……俺、勇者だから。力とか強いし」
ああもう。面倒くさいな。
「わかった。お前は動くな。僕が乗ってやる」
「……えっ」
僕は魔力から糸を紡いだ。太く柔らかく丈夫な糸を。
「キースさん!? え? ええっ?」
その糸でカナタの上半身をしっかりと拘束する。蜘蛛が獲物を捕らえるかのように。腕も動かないくらいぐるぐると。
自分の服を手早く脱ぎ捨て、カナタの、触られてもいないのに期待で硬くなっているそこを露わにした。
「ちょっと、キースさん!? え、嘘だろ。この糸切れない……!」
「当たり前だ。糸の女神の愛し子が自分の魔力から紡いでるんだから、そう簡単に切れてたまるか」
僕はアウリールからもらった薬を取り出して指に取った。まだ硬く閉じている後孔に塗り込み、洗浄魔法でナカを綺麗にする。魔法は本当に便利だよな。
「ん……ふぅ、流石にちょっと……キツイ、かな」
これもアウリール特製のローションをしっかりと塗りつける。指を増やして広げていった。卑猥に濡れた音がする。
「キースさん……」
カナタはギラギラした目で僕の手元を凝視していた。立派なモノもすっかり勃ち上がって先走りを垂らしている。
「いい眺めだなぁ。勇者様が僕の糸で動けない。触ってもないのに、こんなになって」
「キースさん、糸解いて。ね?」
「だーめ」
僕はにたりと笑うと、カナタのぺニスにローションを垂らした。
「無理しちゃ駄目だって。キースさん」
「黙ってて」
「でも、怪我でもしたら」
まったく。このヘタレた態度すらカナタらしくて愛しいと感じるのだから、僕もどうかしている。
僕はゆっくりと、対面座位で、カナタの顔を見ながら腰を落としていった。ハッと鼻で嗤って、カナタを見下ろす。
「生産職を舐めるなよ、勇者め」
「……ぁッ」
小さく上がった嬌声に気分が良くなる。流石の質量で苦しくて、でも、自然と口角が上がった。
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