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第7話

 下着も今度こそ取り払われる。靴下だけ残されてるが、まあ、そこに時間をかけられる余裕なんてないからいい。  内ももを熱い手が掴む。ぐい、と左右に割り広げられ、ギルの鼠径部にキスが落とされた。 「っふ、ぅ……あ、ぁ……っ」  ゆっくりと下へ向かう舌は、皮膚の上を強く撫でたり軽く舐めたりと緩急をつけている。  指がずっしりと重たい陰嚢を裏からくすぐった。陰茎の根元を指が撫でる。下生えをさり、と擦られてもどかしさに呼吸が乱れてしまう。 「や、めろ……っ」  焦らすような動きがいやで、つい、そんなことを言ってしまった。  ギルの言葉を聞いたイリスは、ピタリと動きを止め、手を離す。両脚に乗せられていた腕の重みも遠ざかって、物足りなさに「え」と声を上げてしまう。 「な、んで、……やめた、んだ」 「レイプ魔にはなりたくありませんから」  薄らと犬歯を覗かせて笑っているイリスは、嗜虐的な欲を隠そうともしない。  ギルをいたぶって楽しんでいる。  なのに、彼は優しさと気遣いで凶悪なそれを覆っているから手に負えない。  まるで、中毒性の高い劇物だ。  は、と息を吐く。続きが欲しくて彼を見上げた。月明かりの差し込む部屋の中、瞳を光らせた獣が笑っている。 「私に何を、どうしてほしいんですか。きちんと言ってくださらないと。私は強姦なんてしたくありませんから」 「……普段の、優しい、きみ、はっ……どこへ、行った」  伸ばされたギルの手を取ると、彼は指先を舐めた。フェラを連想させるように、二本の指に舌を絡め、付け根から先端へ。爪先を舌でちろちろとくすぐると、そのまま食んで、ぢゅっと吸い上げた。  背筋が震える。快楽への期待で、勝手に腰は揺れていた。 「っふ……優しいだけの男じゃつまらないでしょう?ほら、ギルさん。言ってください」  指を解放され、イリスがギルの陰茎に顔を寄せる。自分の欲望の象徴の隣に、綺麗な顔があるのはどうも背徳を煽るらしい。  喉を鳴らして震える唇を開く。 「……っ、ほ、しい」 「何を」 「っ……君、に、気持ちよく、してほしい」 「気持ちよくしてあげていますよね?」  イリスの手が腹を撫でた。それだけで快楽が走る。あ、と声を上げると彼は「ほら」と低く笑った。 「性格っ……わるすぎ、だろ……っ、君」 「まあ、聖人ではないので。それで?ギルさんは私に何をどうされて、気持ちよくしてほしいんでしょうか」  言わないと、一生与えられない。  確かに合意の上にはなるが、こんなに辱められるなんて想像さえしてなかった。残っている理性が、痴態を晒すなんて、と喚くが欲の前では意味などない。  ギルは自身の下肢に手を伸ばし、陰茎を指でつ、と撫でる。食い入るように見られているのを感じながら、甘い声で「イリス」と呼んだ。 「君の……口で、僕の……指、を、舐めたみたいに……」 「はい」 「……僕、の……っ……ちんこ、を……しゃぶって、くれ……」  視線なんて合わせられなかった。真っ赤に染まった顔を背け、ギルはふるりと震える。そんな姿を見つめ、イリスがふ、と笑った。 「よくできましたね。もちろん、ギルさんの仰せのままに?」  こっち見て、なんて声がかけられる。視線を移せば、イリスはギルを見つめていた。そのまま、彼は舌を伸ばしてギルの張り詰めた陰茎にぴったり当てる。  期待で心音は、大音量で激しく鳴り響いていた。  イリスが微笑み、舌を動かす。 「うあっ……!!」  舌の面で亀頭を撫でると、先走りのせいで濡れた音が耳をついた。ぴちゃ、ぴちゃ、と犬が水を飲むように音を立てながらそれを舐められる。 「あっ、あ、あっ、あ、あ!ぅ、あぁ……っ!や、やだ……っ、い、いっ……やだ、やだっ……」  竿を手で擦りながら、陰嚢を揉み、口では亀頭を飲み込んでちゅぷちゅぷと甘やかされていく。逃げられないように脚に腕を乗せられていて、腰が跳ねることさえ上手くいかない。  裏筋を舌がくすぐる。自慰では絶対に感じることの出来ない快感が背骨から脳へと走る。 「あ、あっ!あーっ!!きもち、ぃ、っうあ、ああっ!や、あっ、ひ、ぅ、ゔ、あぁっ!!」  じゅるじゅるっ、じゅぶ。卑猥な音を立てながら、綺麗な男が自分の陰茎を咥えてしゃぶっている。おかしくなりそうだった。  イリスの甘く、けれど鉄のようなフェロモンの匂いが肺から脳を侵し、全身を回ってしびれさせていく。  彼自身もまた、アルファとしてギルというオメガを蹂躙することを楽しんでいるようだ。 「あ゛ふ、ぅゔっ!や、だ、めっ……!イぐ、う、イリスっ!だめ、だめだめっ……!!イく、からっ……はな、して……っあ!あ、ぁ、ぃぐ、ぅ、うぅ〜〜──っ!!」  びくりと背がしなる。目の前がバチバチ弾けて、音が一瞬すべて遠のいた。耳鳴りが高く鳴って、首筋から力が抜けた。どさりとシーツに背が沈み込む。 「っは……はぁ……っはー、は……ぁっ……」 「ふふ、よく出せましたね。ずいぶん濃いみたいですけど、溜まってました?」  べ、と舌を出して鋭い牙にさえ白濁液が粘りつく、蒸れた口腔内を見せつけてくる。そんな光景に頭が焼け焦げるようだった。  四肢を投げ出し、ギルは荒い呼吸の合間に呟く。 「っ、こんな、はずじゃ……なかっ、た……」 「そもそも最初に私に「お持ち帰り」されてもいいって決断したのはあなたですよ、ギルさん」  彼のあまりの言い分に、つい声を荒らげてその涼し気な顔を睨みつける。 「僕のせいじゃないだろう!?」 「ええ、あなただけが悪いわけじゃありません」  イリスは水を飲むと、壮絶な色香をまとって、嬉しそうに顔を綻ばせる。ギルの耳元に口付けて、低く、ザラメのような声で囁く。 「でもね……私を許して、求めたのは──あなた自身なんです」  リップ音が首の近くで聞こえた。  背筋がザワついて、一度出したばかりだというのに陰茎がまた持ち上がる。  彼は指で芯を持ったギルの性器を軽く擦ると、ギルに口付け、そのまま口角だけを上げて笑った。 「そうでしょう?ギルさん」

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