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2章 第8話

 出されたそれを迷うことなく、こくりと飲み干す。  口腔内の粘ついたものも、舌で舐め取り唾液とともに飲み込んだ。 「……甘いんだが」 「私のは美味しかったんですか?」 「なんでだろうな」 「ふふっ……それだけ相性がいいということじゃないんですか?」 「……調子のいい奴だな」  頬、というか肌を赤らめたイリスが妖しく笑む。その表情は、いつかの夜に見たものと同じだった。ようやく腹が決まったのか。 「……ギルさん、こちらへ」  彼の手に誘われ、ギルはイリスの上体へ近づく。すると彼はギルの体を押し倒した。 「……確か、まだ初めて……でしたよね?」 「そうだが?」 「……初めて、もらってもいいんですか?」 「今更すぎるだろう」 「それもそうですね……ああ、甘くていい香りです」  イリスの鼻先が首元に押し当てられた。匂いを嗅がれ、そのままギルの体の上を手が撫でていく。 「ッ……ぁ……」 「気持ちいいんですね?」 「……いちいち、言わなくていいっ」  くすくすと笑いながら、イリスの手がギルの体を解いていく。首元から胸へ。 「ギルさん」  ひそめられた声が吹き込まれる。 「本当なら、もっときちんと愛撫して差し上げられたら良かったのですが……すみません、今日は、少し……余裕がない」  イリスの声は、何かを押さえつけるかのように震えていた。ぞくりと背筋が悦に震え上がる。  そんなギルを見て、彼は低く笑った。  イリスの指が唐突に胸の尖りを押しつぶす。ギルが息を呑んだのを見て、「開発済ですか?」と。 「わ、悪いか!?」 「いいえ?ここまで淫らなのに、初めてなんて最高ですよ」  ギルの両脚を長い足が割った。  足が動いた拍子にぐちゅり、と音が鳴る。自分の下肢から鳴った音と気づいて顔が熱くなってしまう。  だって、初めてだった。ヒートでもないのに音が聞こえるほど濡れるのは人生で一度もなかったから。  くつくつと上で笑う獣に、噛みつきたくなってギルは彼の肩に歯を立てる。軽く噛んで、馬鹿にするなよ、なんて呟いて。 「お可愛らしい」 「だから──」 「いいえ?馬鹿になんてとても。私のために、ここまでペースを乱されてくれる貴方が可愛らしすぎて……どうにかなってしまいそう」  イリスの手が無遠慮にもギルの足の間──以前は決して触れようとさえしなかったところ──に伸ばされた。ぐちゃ、と音を立て指が濡れた肉を撫でる。 「ひッ……!?」 「前も触った方が良さそうですね……」  秘所に指を押し当て、具合を確かめるとイリスはそう独りごちた。 「あッ……ぁ、う、ッあ!!」  濡れそぼった秘孔を遊びながら、イリスの手はギルの陰茎を握る。器用にも同時に責め立てられて漏れる声が抑えられない。 「は、っは、ぁ、ぅゔッ!ひ、は、っあ、あ……!」  こんな、こんなの。聞いてない。知らない。  初めて浴びる他人から、直接的な性器への愛撫にガクガクと震える。逃げようとしてもイリスが脚の上にいるせいでどこへも行けない。 「……たったこれだけで、こんなになってしまうんですね」  ざらついた声が聞こえた気がした。 「ぁ、……な、に……ッあ!は、ぁ、あ、あッ!イく、イ、ッ、ぁ、ダメ、だ……ッ!!」 「私の声も聞こえていない?ふふ……かわいいですね、ギルさん」  イリスがなんか喋ってる。こいつ、ラットのくせに余裕あるな。途切れ途切れの思考でくやしいと思い、ギルは後ろに挿入されている彼の指をぎゅうと食んだ。 「ッ……、いたずらがお上手なようで」 「ぅ、ああ゛ッ?!ひ、っぐ、ん゛、ぃッ!!」  彼の指が内部のしこりを撫でた。たったそれだけだ。それだけの、いつもの自慰と同じ刺激なはずなのに、どうしてかギルの体は異常なほどの快楽を拾った。  ばちばちと電流のような刺激が脳を焼く。  もう少しで絶頂の向こうに押しやられる。  ……その寸前に指が引き抜かれた。失った質量を求めて孔がぱくぱくと開閉する。 「な、んで……っ、抜いた、んだ……!」 「いいえ?いたずらをされたから仕返しをしようと思いまして」  とん、と指が秘所の上をたたく。とん、とん、と何度も、そこに挿入る何かを思い起こさせるように。 「ッ……何、して……ッ!!」 「わかりますか……ギルさん」  ざらついた男の声だ。低く、熱を帯びた獣の声。 「ここに」  つぷ。指が軽く挿入された。腰が震える。 「私の、これが」  べちんっ。腹の上を重たい熱杭が叩いた。 「ぁ……ッ」  指が何度も、何度も、そこを荒らす。浅く、深く、何度も抽挿を繰り返す。生々しい水音が鼓膜を焦がす。じりじりと炙られるように、理性が焦げて薄く消えていく。 「……」  イリスの声が途絶えた。その代わりにフーッ、という呼吸音が聞こえる。  ギルが目を開けると、上にいる狼は耳を立てて牙を晒していた。  瞳孔の開ききった瞳が、ギルを見ている。ぞくりと背筋が震えた。 「どうなるのか……わかりますか」  激しい音を立てナカを荒らす指は、気づけば本数が増えていて。そちらに気を取られると、咎めるようにまた名を呼ばれた。 「答えて」 「……ッ」  指が、ゆっくりと抜かれていく。質量を失った孔を、二本の指が、くぱ、と開く。 「どうなるんですか、貴方のここは」 「ひ、ぁ……っ、イリス……の、ちんこ、が……ナカ……ッ、はいっ、て……くる……?」 「……よくおわかりで。そうです。答えられていい子、ですね」  脚を掴まれる。未だにイけていないせいで、苦しいほどの熱が腹の奥にわだかまっていて。ギルは知らずのうちにごくっ、と喉を鳴らしていた。 「ふふ……いい子のギルさんには、ご褒美、あげませんと」  イリスの指が濡れそぼった秘所を撫でた。くちゅ、と音が鳴る。また指を入れてもらえるのか、なんて思っていた。  期待を裏切られるとも知らずに。 「舌、──噛まないでくださいね」 「ぇ……ッ、──あッ!?」  孔の縁を広げ、入ってきたのは指なんかとは比べ物にならないほど、熱くて重たい、硬い肉茎だった。  目の前がチカチカと明滅する。うそだろ。 「ぁ……あ、ぁ……ッ……?ぇ……ぁ……っ??」 「は……ははっ!まさか……入れられただけで、軽くイきましたか?……とんだ、淫乱じゃない、ですかっ」  ずちゅっ!カリ首を呑み込むと滑るように奥へ陰茎が入り込んだ。  初めての感覚に、玩具なんかとは比べ物にならないほどの熱さと重たさに、ギルの脳みそはショートしてしまっていた。 「あ、あああッ!あ、あーッ……あ、ぁ……あ、ぇ……ッゔ!ぁ、あ゛ッ!」 「っは……ギルさん……っはは、もう、わからないか」  奥までを満たすイリスの熱。それがナカを擦るだけで強烈な快感が弾けていた。理性をなくした獣だった。獣に食い散らかされながら、ギルは全てを手放していた。  前立腺をゴリゴリと圧迫しながら最奥へ切っ先がたどり着く。ギルの足をまとめて持ち上げられる。孔を晒した姿になる。  イリスは降りてきていた子宮口を何度も何度もノックし、切っ先を敏感なそこへ押し付けていた。 「ひゃゔッ!あ、ああッ!や、お、おかし、ぅ、なるッ!ま、まっ!ま、っれ、ひ、あぁ!ッは、はッ、はッ」 「す……ごいっ……これ、が……運命、の……っく」  脳みそを直接、手で撫でられるような快楽が何度も込み上げてはギルを飲み込んでいく。もはや、そこには理性のある人間などおらず、ただ本能に溺れた獣が居るだけだった。  パンッ、パンッ、と乾いた音に混じって水の音が鳴っている。ギルは内ももを痙攣させるとナカを締め付けながら絶頂に駆け上がった。 「あ……ぁ、あああっ!イ……ッ〜〜〜!!」  内部を激しく締め付け、声にならない声をあげる。体は硬直し、ギルの視界を快楽が白く塗りつぶした。

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