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第2話
「寒いんだったら厚手の服を着ればよろしいのに。わざと胸を強調して、体のラインが丸見えの透け透けの夜着みたいな服を着なければいいのに。そう思いませんか?」
「そうだな。見ていて気分がいいものではないな」
他の神官たちは見慣れている光景なのかさほど気にする素振りを見せなかった。
聖女が一瞬だけ後ろを振り返るとにっこりと妖艶な笑みを浮かべた。
世の男は全員自分の物だと誇示しているようだ。はっきりいって気持ちが悪い。すぐに顔をそらした。
「ルナどうした?」
「フフフなんでもない。ロナと二人きりだからルナ、すっごく嬉しいの」
「そうか。僕も嬉しいよ。美しいルナを独り占め出来るんだから」
「もうやだ。ロナのエッチ」
ロナウドと聖女は人目をはばからず堂々と何度も口づけを交わしながら、そのまま奥の部屋に消えていった。
「レイモンド殿下、今のうちにお連れください」
ひそかに金を渡し仲間に引き入れた若い神官に声を掛けられた。
「あぁ、分かった」
ユ―リにすぐに駆け寄るとまだ息があった。
でも呼吸は弱々しくて今にも命の灯火が消えそうだった。
二度目の人生のときもユ―リは虫の息で雪のなかに捨てられた。猛吹雪に阻まれやっとの思いで神殿にたどり着いたときには時既に遅し。事切れていた。あんな悔しい思いはもう二度と味わいたくない。廊下に出ると、
「あら、どこぞのドブネズミかと思ったら」
出きることなら一生関わりたくない人と遭遇した。
扇子で口元を隠し嘲笑うふくよかな体格の女。これでもかというくらい白粉を顔に塗りたくり香水の匂いをぷんぷんと匂わせ高慢な態度を取るこの女は母の仇。王妃だ。王妃専属護衛騎士団という立派な肩書きをもつ側にいる男たちは全員王妃の愛人だ。
「新年そうそうドブネズミに会うとはね。嫌だわ。王族でもない婚外子の癖に。誰も許可してないでしょう」
「お言葉ですが国王である父の血は流れてますよ。病床にある父に会いに来ただけですよ。意外とお元気そうで良かったです。王妃が遊んでばかりいて政をおそろかにしていないかとても心配していましたよ。では失礼します」
ニヤリと笑いそそくさと立ち去った。
王妃が八つ当たりする金切り声が聞こえてきた。
「国賓として謁見し何度も挨拶をしたのに。まさかとは思ったが本当に俺のことを覚えていないとは。驚いたな」
ミゲルがやれやれとため息をついた。
彼の正体は隣国のウォルト皇太子だ。
回帰する前も今世もウォルトとは幼馴染みで大親友だ。
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