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第5話
「どうしたらいい?」
「目が覚めたら知らない人ばかりに囲まれていて、雪深い北部に連れて来られたんです。理解が追い付かないのも無理はありません」
「それは分かる。でもどうしても解せないことがある」
「何がですか?」
「彼は俺のことを知っていた。会うのははじめてで、接点はないはずなのに。俺の名前まで」
「一応は神官見習いということになっているらしいので、なんでもお見通しなのかも知れませんよ」
ミゲルが馬車の扉をゆっくりと開けた。
「そこにずっといても構いませんが風邪をひきますよ。ユ―リさま。私が誰か覚えてますか?」
「えっと……その……間違ったらごめんなさい。ミゲルさんですか?」
「そうです。ミゲルです。殿下の名代として式典に何度か参加しそのときご挨拶させていただきました。覚えてくださって光栄です」
ミゲルが右手を差し出すと、やや間を置いてからその手をとるユ―リ。その手はひどいあかぎれとひび割れでボロボロだった。
抱き上げたときもあまりにも軽くて驚いた。頬も痩けていて、体も恐らく骨と皮だろう。神官見習いはあくまでうわべだけで、ろくに食事も与えられず朝から晩までこき使われ、奴隷のようなひどい扱いをされていたことは安易に予想することが出来た。
「さすがウォルト殿下。顔の怪我がすっかり治っていますね」
「あんなすごい治癒魔法、初めて見ました」
「ウォルト殿下の婚約者の知り合いではなかったらそのまま放置でしたよ」
「そうなんですか?にこにこといつも笑って人当たりもよくて。すごくお優しそうに見えましたが」
「それは猫をかぶった仮の姿です。親しい人にしかほんとうのお姿を見せません。ウォルト殿下ほど要注意人物はいませんよ。お疲れでしょう。入浴の用意が整っています」
「ありがとうございますミゲルさん」
にこっと笑うユ―リ。あどけなさが残る幼顔。十五歳くらいかと思ったら同い年と知って驚いた。一年前のある日、親兄弟と引き離され、姉の聖女召喚に巻き込まれた。言葉に絶するひどい扱いを仕打ちをされてきた。ある意味被害者だ。
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