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第7話

「マリウス卿、うちの殿下をあんまりイジメないで下さいよ」 書類の束を抱えたミゲルが執務室に入ってきた。 「まだイジメてませんよ」 「これからイジメるんですか?」 「それは殿下次第です。ミゲル卿、ユ―リさまの部屋ですが」 「ありますよ、ちゃんと準備しましたよ。でもとうの本人が」 言葉を濁らすミゲル。俺に助けを求めるようにチラチラと見てきた。 それから数週間後。 「マリウス卿にまた何か言われたのか?」 「いえ、言われていません」 風呂上がりのユ―リの手に保湿剤を塗るのがすっかり習慣になった。動揺し震える手。嘘をついているのは明白だった。 「優しくするように注意する」 「それは駄目です」 ユ―リが目に涙を浮かべて慌てて頭を横に振った。 「僕が悪いんですから」 「きみは何もしていないだろう」 ユ―リを胸元にそっと抱き寄せると、堰を切ったかのように声を押し殺し、肩を震わせて泣き出した。小柄だからか、すっぽりと腕の中におさまる。最近やっと甘えてくれるようになった。可愛くて、愛おしい。守ってあげたいと庇護欲をかきたてられる。 柔らかい栗色の髪をぽんぽんと撫でると、ようやく落ち着きを取り戻したのかぎゅっと服にしがみついてきた。 「気にせず俺の服で涙を拭いたらいい」 「最近僕変なんです」 「何が?」 「やっぱりいいです」 モジモジしながら顔を真っ赤にするユ―リ。ころころと表情が変わるところもまたすごく可愛い。 とりとめもない話しをしているうちにユ―リは俺にしがみついたまま寝てしまった。よほど寝心地がいいとみえる。 あどけない寝顔を眺めながめていたら、そのうちうとうととしてきて、そのまま眠ってしまった。 夜中にぽっかりと目が覚めた。 「ユ―リ?」 隣で寝ているはずの彼がいなくて一瞬で眠気がとんだ。

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