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第10話
「エレンさま、お願いです。ウォルトを止めてください。全員氷漬けにされてしまう」
治癒魔法はあくまで表向きで、ウォルトは氷魔法の使い手だ。敵の軍を一瞬にして氷漬けにして全滅させるほどの力を持つ。内乱が起きたときも敵が立て籠っていた城もろとも氷漬けにして半日とたたず降伏させた。
「殿下を怒らせるから、だから言ったのに。浅はかですね」
マリウス卿がやれやれとため息をつきながら姿を見せた。
「何かあったんですか?」
「ウォルト殿下とレイモンド卿の婚約に関して撤回するように王太子と聖女と王女がわざわざいらっしゃったみたいですよ。国王陛下が危篤と聞いて帰っていきましたけど、聖女は新婚旅行なのにとかなりごねまして、結局二日帝都に王女と二人で滞在して羽をかなり伸ばして帰ったようです。もう二度と来てほしくないと他の補佐官が申してました」
「ウォルトを怒らせたということは二人とも彼を誘惑したのか?」
「はい、そうです。危うく宮殿全体が氷漬けにされるところでした。補佐官がレイモンド卿の名前を出したら寸でのところで思い止まってくれたようです。殿下は本当に貴方を愛してるんですね。羨ましいです」
いや、違う。婚約者のフリをしているだけだとは言えなかった。
「とにかくウォルトを止めないと」
急いで着替えをして厚手の外套を羽織った。
「エレンさまは楽しそうですね」
「ウォルトの氷魔法が見れるからね」
「お願いですから火を吹くドラゴンだけは呼ばないでくださいよ。一瞬にして川の氷が溶けて下流の町や村が大きな被害を受けます」
「分かってるよ」
エレンさまがにこっと微笑んだ。
本当にわかってますか?
マリウス卿がやれやれとため息をついた。
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