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第16話
「湖と川を凍らせていた分厚い氷がたった一晩で溶けてなくなった。背丈ほどの雪に覆われていたのに土が見えて新芽が芽吹いていた。領民たちからそんな報告が上がっている」
「もしかしてウォルトの心の氷が溶けたからか?」
「久し振りに炎の魔法が使えたから、そのせいかもしれない。レイ、今すぐに結婚式を挙げよう」
「今すぐって、それどころじゃないだろう?」
「これ以上は待てない。嫌だと言っても無駄だよ。無理矢理でも連れていくから」
「連れていくってどこに?」
「エレンさまが神官をしている神殿にだ。マリウス、ミゲル、少し留守にする。前王から結納金の代わりにこの北部を帝国に返還するという書状がある限りは手出しは出来ないはずだ」
「分かりました」
恭しく会釈したマリウスさんに対し、ミゲルは、
「了解っす。ウォルト殿下ってうちの殿下には甘い癖に、殿下以外の王族には本当に容赦ないっすよね」
相変わらずため口だ。目上の人には敬語を使えと何度注意しても俺無理と即答される。
問答無用とばかりにウォルトにひょいと肩に担がれてドアを開けると神殿に移動していた。
「転移魔法を使ったのか?」
「何か問題でも?」
「いや、ない」
祭壇の前に白い服を着た若い男性の司祭がいた。エルフは不老不死。年をとらないからみな見目麗しく若々しい。彼も二十歳くらいに見えて実際は三百歳をゆうに越えている。
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