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第2話
8月22日 PM7:14
8月も半ばを過ぎると夜は少し涼しい。秋が近いのかな。
夕飯のトンカツを頬張りながら、僕とにいちゃんはミサイルの話で盛り上がっていた。
「ねー、ミサイル飛んできたらやばい?」
「やべーよ、死ぬだろ。普通に」
「あんたたち、野菜もちゃんと食べなさい」
ママがなんか言った気がするけど、とりあえず無視する。そういえば言い忘れてたけど、僕らの住む街には基地があって米軍機が年がら年中ビュンビュン飛んでいる。
「にいちゃん、ミサイルって基地に落ちる?」
「それよか宗、残りの宿題やれよな。あ、一個もーらい!!」
「あ!ずるい!」
にいちゃんは僕が取っておいたトンカツの端っこを摘んでぽいっと口に放り込んだ。美味しそうに目尻を下げるにいちゃんの横ではパパが、枝豆をツマミにビールを飲みながらテレビを見ている。パパの見るテレビは隣国のミサイルとか動物園のパンダの赤ちゃんとか、変わりばえしない雑多なニュースを垂れ流している。
「「ごちそうさまー!!」」
手を合わせた僕とにいちゃんはカチャカチャ音を立ててお皿をカウンターにのせていく。はい、お粗末様、とママは言いながらスポンジをくしゃくしゃやっている。歯磨いて、 早く寝なさいよ!とママの声を背中で聞きながら、僕らは洗面所で並んで歯ブラシをゴシゴシやる。
「ねぇ、にいちゃん、今晩"アレ"来る??」
「わはんねー、けど‥たぶん、うる」
器用に歯を磨きながらにいちゃんは答える。そう、今日は"アレ"の日だ。うっかり寝過ごさないように気をつけなくてはならないのだ。アレの日はいつもよりちょっとだけにいちゃんは上機嫌だ。僕もだけど。
*****
8月23日 AM2:12
「宗?寝たか??」
「寝てないよ!来た?」
「来た来た!」
二段ベッドのハシゴをスルスル降りた僕はにいちゃんのベッドに潜り込む。にいちゃんの胸の辺りを触る。そこはいつものにいちゃんとは違っている。柔らかくって、ふわふわで明らかに女の子の胸だ。にいちゃんは僕の手を押しのけると、じゃぁ〜ん!なんて言いながらパジャマの上を脱ぎ捨てる。ぷるん、と形のいいおっぱいが飛び出したのが、オレンジ色がかった豆電の下でもはっきり分かった。
「すげー、ってか前よりまたおっきくなってない?」
「そうか?よくわかんねーなぁ」
そういいながら、にいちゃんはムニムニと掴んでみたり、わざと縦にユサユサ揺らしてみたりして遊んでいる。
もう分かったと思うけど、僕達だけの秘密とはこのことだ。月のない夜に、にいちゃんは女の子になってしまう。なる時間は少しだけばらつきはあるけど、真夜中から少しずつ変化して2時から明け方までの間に少しずつ元に戻っていく。不思議すぎて信じてもらえないかもしれないが本当だ。ちなみに、にいちゃんが寝過ごしてしまっていると起こらない(らしい)。ちなみに下半身の方もなくなっちゃってるとのことだ。このにいちゃんのおっぱいをちょこっと(?)触らせてもらっている…というのが、僕の秘密だ。
「おい、あんま強く揉むなって、痛いだろ」
「ごめん!でも気持ちいんだもん」
「そうでちゅか、そうちゃん〜」
「ばかっ!!」
にいちゃんが僕におっぱいを飲ませようとするような動きをしたんで、ちょっとアセる。僕がムクレてる間にも、にいちゃんはケラケラ笑っている。やれやれ、人の気も知らないで。女の時のにいちゃんは顔や髪型は全く変わらないんだけど、少しだけ背が縮んでて、気の強そうな切れ長の目もいつもより優しい感じになる。
ピンク色の綺麗なおっぱいがあるというのを差し引いても‥‥、色っぽい、と思う。子どもの僕がいうのもなんだけど。
「ほら、そろそろ終わりな」
にいちゃんは赤ちゃんをあやすみたいに優しく僕の手を押しのけると、パジャマを上からかぶってしまった。胸が大きいから、へそが隠れきれてないのが、なんだかイケナイモノを見た気分にさせた。おっぱい揉んどいて何言ってんだって感じだけど。
にいちゃんは、おやすみ、とだけ言うとさっさとまたシーツとタオルケットの間に収まって目を閉じた。僕はもうちょっとしたいこと、あったのに。
「にいちゃん‥、あのさ」
「下だったら絶対見せないからな」
「う‥‥」
にいちゃんはおっぱいはいくらでも見せてくれるし触らせてもくれるのに、下は絶対に見せてはくれないのだ。理由はその時によって色々だけど、多分恥ずかしいんだと思う。でもさ、隠されると余計見たくなるのが男心ってものだと思わない??
「お前にはまだ早いんだよ」
「‥‥トンカツ一個取ったくせにぃ」
「サラダのピーマン食ってやったろ?」
う、バレてた。実は夕飯のサラダに入ってたピーマンをにいちゃんの方のお皿にちょっとずつ移動させていた。にいちゃん気づいてないと思ってたのに。
「お前、すぐ顔に出るんだよ。明日はちゃんと宿題最後までやれよ。そしたら一緒にプール行ってやる」
「ホント?ホントにホント?」
ああ、だから早く寝ろよ、とだけにいちゃんは言うと頭までタオルケットを被った。もうちょっと話してたかったんだけど、にいちゃんは疲れてたのか、規則的な寝息がもう聞こえている。にいちゃんの横で寝たかったけど、僕達2人が寝るには明らかに狭い。僕はノロノロと二段ベッドの上へと登り、タオルケットに包まった。
おやすみ、にいちゃん、またあした。
こうして僕達は幾つもの秘密の夜を重ねて、それがずっとこのまま続くんだって思っていたんだ。
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