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第12話 ふたりのかたち

 凛士が笑い止んだあと、アルヴァルドはしばらく凛士の髪に触れてから、静かに立ち上がった。 「すぐに薬酒を持ってこさせる。体を休めろ」  アルヴァルドは背を向けた。衣擦れの音が続く。  あの日、凛士に選択肢を突きつけた時と同じように、また去っていくのか。  アルヴァルドの服の裾が寝台から滑り落ちる直前、凛士はそれを掴んだ。 「必要ない」  自分でも驚くほど、それはしっかりとした意思を持った声だった。  振り返ったアルヴァルドを見つめる。 「俺には必要ない」  凛士がもう一度言うと、アルヴァルドは凛士をしばらく見つめたあと、小さく息を吐いた。 「……お前の体を疼かせているそれは、刻印によるものだ」  凛士はアルヴァルドを睨むように見つめた。  そんなことは、言われるまでもなくわかっていたことだった。  アルヴァルドの服の裾を、自分の方へと、力強く引っ張り寄せる。 「今手放したら、俺は永遠にあんたの手には落ちない」  それは偽りのない本気の宣言だった。  二度とこの部屋には来ないし、刻印に何が宿っても、誰に何を言われても、それでこの世界が滅んだとしても――決して目の前の男には抱かれない。  アルヴァルドの金色の瞳が、凛士を見た。  獰猛な色に、唐突に別の感情が宿る。それが何か確かめる間もなく、服を掴んでいた手ごと抱きしめられ、押し倒された。 「二度と離さない。お前は俺のものだ」  唇が重なる。どちらからともなく舌を出し、絡め合った。  角度を変えて何度も口付けながら、確かめるように熱を追う。  凛士はアルヴァルドの服に手をかけた。脱がそうとするが、ボタンがどこにあるのかもわからない。もどかしさに布を握りしめると、察したアルヴァルドが身を離し、素早く衣服を脱ぎ捨てた。  それを見て、凛士も残っていた服を全て脱ぎ、アルヴァルドに覆い被さるように身を重ねた。  凛士は、アルヴァルドのうっすらと血管の浮いた腹部に手を添わせ、その下の勃ちかけているそれに触れた。自分のものと一緒に握り上下に擦ると、アルヴァルドが小さく呻いた。  吐息を触れ合わせ、また口付ける。  アルヴァルドの手が凛士の手に重なり、ふたつの男根を包む。凛士が腰を突き上げると、先走りが溢れぐちゅぐちゅと水音を立てた。 「はぁっ……あぁ……きもちい……っ」  吐息の熱が高まっていく。  アルヴァルドがもう片方の手を凛士の背に回し、ゆっくりと撫でるように這わせたあと尻を掴んだ。何度か揉みしだき、指を奥へと忍び込ませる。 「あっ」 「……痛くはないか?」  耳元で囁かれ、それだけで凛士は達してしまいそうになった。 「そこらの……やわな奴と……一緒にすんなよ」  睨むように言うと、アルヴァルドがふっと笑った。  指先が入ってくる。凛士は両腕をアルヴァルドの首に回し、自分から腰を沈めて動かした。  前と後ろの刺激に、体の熱がどんどん昂っていく。  凛士は、その熱を分け与えるようにアルヴァルドの口に噛みつくと、舌を絡めた。  何本かに増えた指が後ろを掻き回し、不意に抜けた。  ぐいと腰を持ち上げられる。  待ち望んでいた熱の予感に、凛士のそこは、甘く疼いた。 「挿れるぞ」 「あ――……っ!」  勢いよく突かれ、凛士は背を仰け反らせた。 「ま、まって……あぁっ」  二度、大きく突かれ、それは凛士の最奥に達した。  自分の腹にねとりとした白濁が垂れ、いつの間にか射精していたことに気づいたが、凛士の体はさらに快感を求めるようにうねり、アルヴァルドのそれを呑み込んだ。 「あっ、あっ、もっと……っ」  そこを突かれた途端、凛士の奥から強い快感が全身――つま先まで伝わった。 「そこ……っ……だめ……っ」  逃げようとする凛士の腰が掴まれる。  アルヴァルドの瞳がまっすぐ凛士を捉え、かすかに笑った。 「……言っただろう、二度と、離さないと」  声とともにそこを突き上げられる。  アルヴァルドの熱く硬いものに何度も激しく攻められ、容赦なく扱かれる。 「また……っ……あっ……」  熱と快感が身体中を駆け巡る。凛士も腰を振り、それを追い求めた。 「おれっ……もう……っ」 「はぁ、あっ」  激しい快感に支配され、凛士は涙の滲んだ目をアルヴァルドに向けた。余裕のないアルヴァルドの顔。彼も同じ熱に支配されているのだと思うと、たまらない愛しさを感じた。 「も、いくっ……っ……アル……――っ!」 「リンジ……くっ……――っ!」  自分のそこから熱い迸りが放たれ、それはアルヴァルドの腹を汚した。それと同時に、腹の奥に、熱い奔流の飛沫を感じた。 「はぁ……はぁ……っ」  呼吸を整える。  アルヴァルドのものが抜けた後も、奥はじんわりと熱いままだった。    アルヴァルドの指に髪を掻き上げられ、汗を拭われる。  そうする彼の体にも、熱の余韻が漂っていた。  目が合う。  凛士は急に恥ずかしくなり、顔を逸らした。 「……あれ、しなくていいのかよ」 「なんだ?」 「蓋して精液馴染ませるんだろ」  今更この行為を儀式扱いにしても、顔の火照りは消えないのに。  アルヴァルドはわずかに目を見開いたあと、笑みを浮かべた。 「これから何度もするのだ。わざわざ馴染ませずとも、いずれよくなる」  囁きが唇に触れる。  凛士は観念して、再びその熱を受け入れた。

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