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第6話 逆戻り

仕事を終えて帰宅した。 颯太の部屋をノックしてドアを開けると、まだベッドには横になっていたが、目は覚ましていた。 「起きてたの?」 少し微笑んで、こくりと頷く。 「今日は調子が良さそうなら、お風呂に入ろうか?」 え?というように首をかしげて考え込んでいる。 「良ければ身体を洗ってあげるよ」 そう言った瞬間、彼は“ノー”とばかりに顔を何度も横に振って拒否した。 あれ? 「恥ずかしいのかな?」 そう言うと、急に布団を頭までかぶってしまった。かわいい。 ……だって導尿までしてあげたのに。 今さら恥ずかしがるところじゃないだろ……とは、さすがに言えない。 「じゃあ、一人で入れる?」 布団からそっと顔をのぞかせ、こくりと頷いた。 「わかった。その代わり、急に気分が悪くなったら大きな音を立てて知らせてよ。いい? その時はすぐ覗きに行くから」 また頷く。 すぐにお湯を溜め、下着の替えと俺のパジャマを用意した。 ……そうだ、颯太のパジャマも買ってくればよかった。明日買いに行こう。 それにしても、一人で風呂はまだ早い気がする。 今日はほとんどベッドで寝ていたわけだし、ずっと起きていたならまだしも、体力が戻っているとは言い難い。 お風呂は血圧が下がりやすいんだよな……大丈夫だろうか。 時間を測って様子を見ることにした。 「颯太、お湯が溜まったよ。着替えはここに置いておくね」 そう声をかけて、俺は夕食の準備に取りかかった。 今夜はパスタだ。ナポリタンとスープとサラダ。 エビグラタンが好きなら、きっとこれも好きだろう。 お肉を食べさせたいから、ミートボールを作ってナポリタンに入れた。 さて……時間を見ると、もう20分経っている。 少し不安になって浴室へ向かった。 静かだ。音がしない。 ノックして声をかける。 「颯太? なんか音出して!」 返事がない。 嫌な予感がして、すぐにドアを開けた。 湯船につかったまま、目を閉じている。 え? このままじゃ溺れる。 俺は慌てて服を脱ぎ捨て、裸のまま颯太を抱き上げて湯船から引き上げた。 「何やってるんだよ……危なかったぞ」 身体はだらんと力が抜け、ぐったりしている。 バスタオルで拭いて一度床に座らせ、俺もざっと拭いてから再び抱き上げてベッドへ運んだ。 だから一人じゃ危ないと思ったんだよな…… 風呂に誘うのが早すぎたのかもしれない。 シャワーだけにしておけばよかった。 寝かせた途端、彼の目が少し開いたかと思うと―― いきなり「ゲーッ」と吐いた。 そばにあったバスタオルでなんとか受け止めた。 「思いっきり吐いていいよ」 背中をさすり続ける。 その後、颯太は立て続けに三回ほど吐いた。 かわいそうに……胃が弱っているんだ。 また点滴が必要だ。体力が全然ない。 「颯太、お風呂でめまいがしたんじゃない?」 問いかけると、弱々しく頷いた。 やっぱりか。 すぐに血圧を測ると、また90近くまで下がっている。 そりゃ倒れるよ……下がりすぎだ。 点滴にめまいの薬を足して、吐き気止めと胃薬も入れよう。 ああ……また当分、病人だな。 うがいをさせ、水を少し飲ませる。 洗面器も置いておく。 颯太はもうぐったりしてしまった。 あぁ……。 これは完全に俺のミスだ。 颯太の症状を甘く見てしまった。 思った以上に深刻な状態なのかもしれない。 やはり至急、検査が必要だ。 そして―― 食事はまたお粥に逆戻りだな。

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