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第11話 保護者の重さ
颯太は、何か言いたそうにこちらを見つめていた。
「颯太、どうしたの? 言っていいよ。なに?」
<俺、この際……頑張って契約を解除してほしいです。
でも一つ不安なことがあって……これから俺の保護者はどうなるんでしょうか?
事情があって、母が4歳の時に亡くなって以来、俺には保護者がいないんです。
戸籍上の父親はいますが、俺に冷たくて……母が亡くなってから一度も会っていません。
どうしたらいいですか?>
え……?
しばらく絶句してしまった。
山川先生も同じメールを読んでいて、二人で顔を見合わせてしまう。
あまりにも重い現実だった。
「颯太……何と言っていいか分からないけど……
保護者って、俺じゃダメかな?
俺で良ければ、全力で……一生、颯太を守るよ」
その瞬間、颯太がわっと泣き出した。
泣き崩れるというのは、こういうことを言うんだな。
思わず手を取って抱きしめてしまった。
山川先生の前で申し訳ないと思いながらも、
颯太はいつまでも泣き止まない。
かわいそうに……なんてことだ。
この世に、そんな父親がいるのか。
音楽事務所の社長よりも、もっとひどい。
俺も一緒になって泣いてしまった。
あまりにも、かわいそうすぎる。
颯太が泣き止まないから、俺も止まらない。
そのうち、山川先生が俺の背中を軽く叩いた。
「では、とりあえず先に大学へ提出してきますね。
大学の件が終わったら、また伺いますので……その時に続きを話しましょう」
そう言って、そっと帰っていった。
俺は頷くだけで、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
颯太は少し落ち着いたかと思えば、また涙があふれてくる。
あとからあとから涙が流れて止まらない。
かわいそうに……
今まで、どれほどつらかったんだろう。
ただただ、俺は颯太をしっかりと抱きしめていた。
今は、それしかできないのだから。
「颯太。今日から俺が颯太の保護者だよ。なんでも甘えていいよ」
泣いていたはずの颯太が、ふふっと小さく笑った。
「なあに? 早速甘えたいことがあるの? いいよ、言ってごらん」
俺の胸から離れて、スマホを打ち始める。
<一緒に寝たい。俺、親と寝たことがない>
「よし、分かった。今夜から一緒に寝よう。
そうだ、ベッドが狭いから、もっと大きいのに交換しよう」
<え? わざわざそんなことしなくても……>
「ダメ。もう決めた」
颯太が照れながら笑った。
すぐに出入りの家具屋に電話すると、
30分も経たずにカタログを持ってきてくれた。
こういう時の対応は本当に早い。
「ほら、颯太も見て。どれがいい?
俺は幅が160cmのクイーンサイズか、180cmのキングサイズかなと思うんだけど」
くすっと笑って、また何か打っている。
<なるべくくっついて寝たい>
「……もう~、また抱きしめたくなること言うなあ~。
よし、じゃあクイーンサイズにしよう。160cmなら十分くっつける」
颯太は恥ずかしそうに笑い、俺の胸に顔を埋めた。
なんてかわいいんだ。
ベッドが決まったら、すぐに電話で注文した。
ダブルマットレスの寝心地の良いものにして、
ベッドパッドとシーツは2枚ずつ、
掛け布団とカバーは白のホテル仕様にした。
「あれ? シーツとパッドは2枚で足りるかな?」
颯太がきょとんとした顔で見上げる。
「だってさ、子どもっておねしょするだろ?」
もう~と言わんばかりに、俺の胸を軽くゲンコツでポンポン叩いてきた。
あははは。かわいすぎる。
でも念のため、パッドもシーツも3枚ずつにした。
夏は汗をかくだろうし、洗い替えは多い方がいい。
羽毛布団もクイーンサイズだから必要だ。
掛け布団カバーは、白の地模様にした。
それと同じ白だけど、他の柄のカバーも注文した。
俺は寝具類は真っ白が好きなんだよ。
夏掛けの薄い布団も2枚頼んでおく。
汚れたらすぐ洗って乾かせばいいし、不足ならまた買い足せばいい。
あ~颯太がずっと俺にくっついている。
くっついてなかったら服の端を握ってる。
そんなに人恋しかったのか。
俺がこれからずっと埋めてやるからな。
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