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第21話 出会い話
颯太を連れて帰り、俺の寝室に寝かせた。
普通ならこういう時は解熱剤を飲ませて寝かせればいいのだが、
颯太の場合は“治るだろう”という見込みが立たない。
予想ができないところが厄介だ。
夕飯も食べられないし、点滴は必須だ。
問題はトイレだ。あと2時間くらいで起きられるだろうか。
導尿するくらいなら、留置カテーテルを入れた方がいい。
ゆっくり寝かせるためにも、そうするしかない。
戸棚を見るとあれ?
「あー、最後の1個か。明日補充しないと」
そこへ楓から電話が来た。
「今から淳一と一緒に行くからよろしく」
「来るのはいいけど、留置カテーテルを5セットくらい持ってきて。
あと点滴も不足しそうだから補充頼む」
「ええ〜?了解」
嫌そうな声だった。まあ、めんどくさいよな。
とりあえず先にカテーテルを入れ、氷枕を当ててやった。
終わった頃に二人が来た。早いな。
楓「お兄ちゃん、頼まれたもの持ってきたよ。
ついでに解熱剤、胃薬、吐き気止め、めまいの薬もね。
私って完璧な妹でしょう?」
「ふっ、そうだね。負けたよ」
楓「颯太君の様子、見てもいい?聴診器も持ってきた」
「うん。俺の寝室のベッドに寝かせてる」
楓「え?」
「いいから行けよ」
楓はすぐに部屋へ入り、2〜3分で戻ってきた。
「かわいい子だねえ〜。もうカテーテル入れたの?」
「そうだよ。いつ回復するか予測が立たない子なんだ」
淳一「へえ〜珍しいね」
「それで困ってるんだよ。まあ、それより夕飯まだだろ?食べる?」
楓「食べりゅう」
淳一「俺もよろしく」
何にしようか。
海鮮と野菜の中華粥にしよう。颯太にも残せる。
冷凍ご飯とシーフードを出し、野菜を切り、
大きな土鍋にたっぷり作る。
味を調えてシーフードを入れ、最後に卵を回し入れる。
「ほら、出来たよ。中華風海鮮粥だ」
楓「うわ〜おいしそう!来て良かった!」
「毎日来るなよ」
淳一が笑っている。
小鍋に颯太の分を取り分ける。
淳一「それ、颯太君の分?」
「そうだよ。それが何か?」
淳一「いや〜、相当愛情が入ってるね。兄貴をここまで変身させるとは」
楓「そうだよね〜。いいパートナー見つけたね!」
「ん?どういうこと?」
二人が顔を見合わせた。
「何?どうかした?」
淳一「もしかして知らないの?」
「何を?」
楓「颯太君ってオメガだよ」
「えっ……?」
絶句した。身体が固まった。
淳一「本当に知らなかったんだ?」
「歌手だからベータだと思い込んでた。
聞かなかったし……それに匂いが全然しないんだよ。なんでだ?」
楓「18歳でしょ?ヒートがまだなのかも。
栄養状態が悪かったんだよね?
過労とストレスで身体の発達が遅れてるんじゃない?」
俺は完全に手が止まった。
ショックで座り込んでしまった。
楓「あ、じゃあ頂きますね」
淳一「俺も」
二人はさっさと食べ始めた。全く……。
俺「ああ‥‥‥だから身体が弱いのかなあ」
楓「そうかもね。相当無理して頑張ってたんだよ。どうやって知り合ったの?」
俺「3週間前、柚音のコンサートがあってさ。
帰り道の路地で、げーげー吐いてる男がいたんだよ。
酔っ払いかと思ったけど酒の匂いがしない。
肩を叩いて“大丈夫?”って聞いたら、そのまま倒れた。
連れて帰ってベッドに寝かせて、そこで初めて柚音だと気づいたんだよ。
公演直後に路地で1人で吐いてるなんて、絶対訳ありだと思ってさ。
高熱で全然動けなかったし。
その時からずっとカテーテルが必要だったんだ」
「丸二日経って、3日目にようやく目を覚ました。
そしたらもう声が出なかったんだよ」
楓「へえ……そんなことあるんだ。公演では歌ってたんでしょ?」
俺「そう。すごく綺麗な声で、最後まで歌ってた。
その直後だから、本当に驚いたよ」
淳一「でも世間では行方不明で捜索されてたんだろ?
俺も楓から聞いてネットで調べたよ」
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