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第24話 お雑煮
その日の午後、楓(かえで)からメールが来た。
父母に昨夜の話をしたらしい。
えー??
誰が喋っていいと言ったんだよ。
……いや、口止めしなかった俺が悪いのか?
とにかくもう手遅れだ。
それで父が颯太(そうた)に会いたがっているし、
具合が悪いのを心配しているそうだ。
夕方、動けそうなら病院に連れてきてほしいと言っているらしい。
母も会いたがっているという。
もう〜話がどんどん大げさになってるじゃん。
どうするよ。
検査結果をみんなでカンファレンスしようという話になったらしい。
父は理事で経営を見ているが、一応内科専門医だ。
しかし、まだ耳鼻咽喉科の精密検査をしていない。
総合的な判断はまだできない。
だから夕方に耳鼻咽喉科に来い、ということらしい。
……もう勝手にみんなで決めている。
颯太は昼に煮込みうどんを少し食べられたが、また眠ってしまった。
この時点で熱は37度5分。
大して下がっていない。点滴は続行だ。
起きられないならカテーテルも取れない。
よし、夕方5時になっても起きられないようなら連れて行かない。
そうメールを返した。
俺は颯太を見守りながら、パソコンで事務仕事をした。
経営状態は父がいつも見ているが、時には俺も見ないといけない。
診療部門全体は俺の責任だ。
ここんとこ休んでばかりで、病院の見回りさえしていない。
少し心が痛むが、しょうがない。
颯太が第一優先だ。
しかも弱いオメガだと分かった以上、全力で守る。
そうだ、夕飯を支度しよう。
野菜入りのお雑煮が良いかな。
お餅は消化が良い。焼いて入れよう。
だし汁は昆布と鰹節をたっぷり使っておいしくできた。
鶏もも肉、ネギ、白菜、大根、ニンジンを入れてOK。
そうだ、颯太に前開きの肌着が必要だった。
ネットで半袖とタンクトップを何枚か注文した。
また颯太の様子を見に行くと、目覚めていた。
「あれ、起きたの?」
うん、と頷く。
「具合はどう?痛いところは?めまいは?」
ふふっと少し笑った。
タブレットを持ってこよう。
点滴も外してやった。そろそろいいだろう。
上半身を起こし、タブレットをトレーに乗せると、
颯太はすぐにタイピングした。
<もう、どこもなんともないです。多分、トイレにも行けます>
「う〜ん、どうしようかなあ。颯太の“大丈夫”はあんまり当てにならないからねえ」
そう言うと、頬をぷーっと膨らませた。かわいい。
「実はね、妹の楓が耳鼻咽喉科の精密検査をしたいらしいんだ。でもまだ出かけるのは無理だし、明日にしようか?」
颯太は少しうつむいて考え、
<はい、念のためそうさせてください。また倒れるとご迷惑をかけるので>
「うん、わかった。診察は明日って言っておく。今日は安心して休んでね」
「夜はお雑煮にしようと思うんだけど、好き?」
うんうん、と頬笑んでうなずいた。
「そうか。いつ食べる?今でもいいよ。お腹空いてない?」
う〜んと考え、
<お餅を1個にして今食べます>
もう、かわいいんだから……。
「わかった。一緒に食べよう」
キッチンへ行き、小鍋に野菜入りのだし汁を温める。
その間にお餅を3個焼く。俺は2個食べる。
熱々を颯太に出した。
「颯太、すごく熱いよ。気をつけて少しずつね」
お餅は半分に切って焼いたから食べやすいはずだ。
颯太はレンゲでつゆをおいしそうに飲んでいた。
俺の方が大満足だ。
俺も食べよう。焼いたお餅は久しぶりだ。
「美味しい?」
うんうん、と笑顔で頷いてくれた。
……ふっ、強制的に言わせちゃったな。俺バカだ。
そこへピンポーンと鳴った。
やな感じ……もしや?
颯太が「え?」という顔をする。
しょうがないから玄関へ行くと――
もう部屋に入って来てるじゃん!
父「なんか久しぶりだねえ」
母「元気そうじゃない?」
楓と淳一は「えへへへ」と気まずそうに笑っていた。
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