30 / 43

第30話 ベッドメイク

翌日、朝一でクイーンサイズのベッドが届いた。 業者さんが3人でやって来た。そりゃそうだ、ベッドが大きい。 颯太は「見たい」と言うので、すでに車いすに乗ってスタンバイしていた。 なんだか張り切っている。 運ばれてくるベッドを見ると、本当に大きい。 特にマットレスが巨大だ。 しかもダブルマットレスだから、余計に嵩張る。 俺は同時に届いたシーツや布団類を荷解きしていた。 派手に注文したからな。 ベッドパッド3枚、シーツ3枚、掛け布団カバー2枚。 ランナーも色違いで2枚。 そこへ、ネットで注文したばかりの颯太の肌着まで届いた。 嘘みたいに早い。 「颯太、これ颯太の肌着だよ。中見る?」 うんうん、と頷く。 ダイニングテーブルに広げると、颯太は車いすを動かして近づき、手に取って眺めていた。 車いすを買って本当に良かった。 何より、倒れる心配をしなくて済むのがありがたい。 「颯太、タグは全部取って畳んでおいてね」 はさみを渡すと、颯太はビニール袋から服を取り出し、眺めては丁寧に畳んでいた。 そこへ業者さんが声をかけてきた。 「すみません、こちらのセミダブルのベッドは処分ですか?」 「あー違います。隣の部屋に運んでほしいんです。 で、その部屋にあるシングルベッドを奥の部屋に移動させてください」 申し訳ないが、高い買い物をしたから許してもらおう。 ……が、颯太の部屋に福祉道具を置きっぱなしだったことを忘れていた。 慌てて福祉道具をリビングにどんどん移す。 なんで忘れるかなあ、俺。 浮かれてるんだよな、我ながら。 颯太の部屋のシングルベッドを奥の部屋に案内して設置してもらう。 なんとか移し終えたところで、セミダブルベッドが颯太の部屋に運び込まれた。 ふう……危なかった。 運び終えたら作業終了。 「ありがとうございました」 颯太もペコリと頭を下げていた。 業者さんが帰ったところで、ここからが本番だ。 ベッドメイクは体力勝負。 まず、病院からもらってきた防水ビニールシートを颯太の位置に敷く。 ポンポンと音がした。 「えっ?」 颯太が頬をぷーっと膨らませている。 「あはは! おねしょを心配してるんじゃないよ。 入院患者のベッドは必ずこれを敷くんだよ。 点滴が漏れたり、血液がついたりするからね。 颯太も導尿するから、絶対必要なんだよ。 シーツは汚れてもいいけど、マットレスは大損害なの。分かった?」 ふくれたまま、うなずく。 その頬を手のひらでプシューとへこませた。 「これから医療業界のこともいろいろ覚えていってね」 頷いていた。 その上にベッドパッドを敷き、クイックシーツをかぶせる。 ベッドが大きいと、四方に回り込むだけで大変だ。 次は最難関――いや、大げさじゃない。 俺は布団カバーに布団を入れるのが大の苦手だ。 脇にファスナーがあればいいのに、注文したのはホテル仕様。 足元が大きく開いているだけで、入れにくい。 頭側は両サイドに少しだけ隙間がある。 中で止める紐もスナップもない。不便だ。 フーフー言いながら、なんとか入れ終えた。 次に掛け布団を広げ、足元に長くカバーを垂らす。 足元に織り込む部分には布団がない。 つまり、織り込むのはカバーだけ。 マットレスを持ち上げて織り込むのは力が要る。 角は三角に折って、見えないようにマットレスの下へ。 颯太はずっと俺の作業を見ていた。 何か覚えようとしているのかもしれない。 そうこうして、ようやく完成。 ビシッと、一流ホテルのようなクイーンサイズのベッドが出来上がった。 「颯太、きれいに出来たと思わない?」 と意見を押しつけてみた。 返事がない。 ふと見ると、車いすでこっくりこっくり居眠りをしていた。 くそー、俺の苦労を見てなかったのか。悔しい。 でも、出来たばかりのベッドに寝かせてあげよう。 掛け布団をめくり、颯太を抱き上げて寝かせた。 どうかな?寝心地は? ……ダメだ、寝てる。 まあいいさ。

ともだちにシェアしよう!