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第31話 メニュー表

 昨日はベッドも届いたし、福祉道具も届いた。 あとで部屋を少し模様替えしないといけない。 朝食の準備はできたが、颯太がまだ目覚めない。 朝の診察をして起こそうか。 先に熱を測る。36度7分。血圧もまあまあ。 胸の音も問題ない。 お腹の音はまだ弱い……そろそろ決着をつける時だ。 あとでお腹を温めてマッサージしてやりたい。 そっと肩を叩いた。 「颯太、おはよう。トイレに行く? それともベッドの上でおしっこ取ってあげようか?」 パチパチと瞬きをしている。 昨日届いた尿瓶を目の前で見せた。 「颯太、起きられないならこれで取ってあげようか?」 尿瓶に目が釘付けになっている。 掛け布団をめくってズボンに手をかけたら、 颯太の手が俺の手を掴んで、脱がせまいと抵抗してきた。(笑) 「じゃあ、起きてトイレに行くの?」 頷いた。よし。 あとは放っておく。どうするか様子を見ることにした。 颯太はそろそろと起きてベッドに腰かけた。 俺は車いすをそばに置いた。まだストッパーは掛けていない。 すると昨日教えた通りにストッパーをかけ、 肘掛けに両手を置いて立ち上がり、方向をくるりと変えて、 両方の肘掛けに手をかけてから車いすに座った。 完璧だ。 そのままスイスイとトイレに到着した。 待っていると、そのうちに出てきた。 俺の方をちらっと見て、照れて少し笑った。 かわいい。思わず拍手した。 「颯太、偉いぞ。完璧だ」 ちょっとニヤッとしているけど、恥ずかしそうにうつむいた。 本当にシャイな子だ。 でもまだ続く。 そのまま洗面所へ行き、またストッパーをかけて立ち上がる。 洗面台に片手をついて支えながら、顔を洗って歯磨きをした。 やはり手の力が弱い……筋トレか。でもまだ早いな。 「颯太、朝食できてるよ。食べられる?」 頷いた。 また車いすに座ってダイニングテーブルに着いた。 テーブルに着いた颯太の頭を撫でた。 「颯太、偉いね。まだ二日目なのに完全に覚えたね。頭がいいんだね」 ううん、と少し恥ずかしそうに顔を振った。 用意してあったジャガイモのポタージュを出す。 あとはハーブティーだ。 「そうだ、今度さ、メニュー表を作ってくれない? レストランみたいにプリントして、テーブルの上に立てて置こうよ。 カード立てを買ってさ。 まずは朝食用だね。指さすだけで選べるようにしよう」 嬉しそうに、うんうんと頷いた。 「じゃあ、ジャガイモのポタージュ食べてね」 じゃがいもの半分はつぶし、半分は形を残してあるから、 ジャガイモのおいしさがしっかり味わえる。 颯太は美味しそうに食べていた。 あとは柔らかいロールパンとツナサラダ。 お水と薬も出しておこう。 そうだ、颯太のために1週間分を入れる薬箱があれば便利だな。 「颯太、あとで100均に行くんだけど、颯太も行く?」 うんうんと頷いた。 「よし、食べたら行こうね。 カード立ても売ってるといいな。なければネットで取り寄せればいいよ」 了解の敬礼。 そうか、その方法もあったね。 颯太となら何をやっても楽しい。 こんな調子で一日中遊んでいられる。 仕事もしないでこんなことでいいのかなあ〜。 でも……毎日が楽しい。 颯太のおかげで幸せだ。 俺の人生で初めてだよ。

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