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第37話 楽しい団欒に

 颯太の治療は、その後も順調に進んでいる。 でも、残念ながらまだキス以上はしていない。 俺はずっと我慢の子。(笑) ヒートが来るほど颯太の身体が成熟していないからだ。 なんといってもまだ十八歳。焦る必要はない。 マッサージの後は声がよく出るようになってきて、それが密かに嬉しい。 本人には言わないけど。言ったら恥ずかしがるから。 今日は日曜日。家族がランチに来る日だ。 最近は颯太も一緒に料理をするようになった。 今日は豚汁と、颯太が作った唐揚げ。それにポテトサラダ。 テーブルを整えたところへ、賑やかに家族がやって来た。 一番うるさいのは妹の楓だ。 「颯太君、何作ってくれたの?」 「私も楽しみよ」と母が笑う。 父もニヤニヤしている。 「ほう、うまそうだな。早く食べさせてくれ」 「今日はね、颯太が唐揚げとポテトサラダを作ってくれたんだよ」 「へえ〜」と声が揃った。 豚汁をよそい終えると、みんなで手を合わせた。 「いただきます」 唐揚げは普通の味とカレー味の二種類。 さらにコーンフレークの衣のものまである。 「わ〜このコーンフレークの衣、サクサクでおいしい!」と楓。 「マジ旨いな」と淳一はカレー味を気に入ったようだ。 父は「豚汁もコクがあってうまいな」と満足げ。 颯太を見ると、自分は食べずにみんなの顔を見ている。 「颯太、どうした? 食べなよ」 うん、と笑って食べ始めた。 きっと、こういう賑やかな食卓を知らないんだろう。 ワイワイとした家族の団欒。 それをただ見ているだけで幸せそうだった。 ひととおり食べ尽くした頃、豚汁の鍋も空っぽになっていた。 よく食うなあ、うちの家族は。 そこへ電話が鳴った。 山川弁護士だ。日曜日に珍しい。 「ちょっとごめん、弁護士から電話だ」 席を外して書斎に向かう。 「お休み中に申し訳ありません。実は少し困ったことがありまして……。 立花家の執事・小林さんが病院の前に来ているそうなんです。 急ぎの用で、颯太君の生活環境を見たいとのこと。 それと、お父さんから伝言があるそうで……どうしましょうか?」 「ああ、そうなんですか。もうそこまで来ているなら仕方ないですね。 うちの住所を教えてください。来てもらって構いません」 「承知しました。では失礼します」 電話を切ると、胸の奥がざわついた。 なんだか面倒なことになりそうだ。 テーブルに戻ると、父が心配そうに聞いてきた。 「どうしたんだ? 弁護士だったんだろう? 日曜日に何かあったのか?」 みんながこちらを見ている。 「あのね、颯太。今、病院の前に立花家の執事さんが来てるらしい。 急用で、うちに来るって」 「……え?」 颯太の表情が急に曇った。 「じゃあ、私たちいない方がいいのかな?」と楓。 「いや、普段の様子を見たいらしいから大丈夫。 ありのままでいいよ」 「じゃあ片付けましょう」と母。 「楓、お茶お願いね」 「了解」

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