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第51話 颯太体調不良

医務室から戻った後、山川弁護士に 「医薬品やキャビネットを医務室に入れたいこと」 「普通に納品すると量が多すぎるので、佐久間病院から必要な分だけ分けてもらい、実費を会社が払う形にしたいこと」をお願いした。 注文は俺がメーカーに直接発注しても問題ないそうだ。 秘書室に話を通しておくので、あとは任せておけば経理や納品管理の部門にも話が通るだろうとのことだった。 本当は医務室を診療所として使いたいところだが、それでは法律違反になる。 色々と細かい規約があるし、経費の無駄でもある。 佐久間病院から必要な分だけ分けてもらうのがベストだ。 父に電話して、この件を了解してもらった。 「好きなようにやってくれ」と言ってくれた。 電話を切ってふと颯太を見ると、身体がわずかに揺れている気がした。 目を見ると、焦点が合わずトロンとしている。 「颯太、少し休んだ方がいい。身体が揺れてるよ。休もう」 山川先生も驚いたように颯太を見つめた。 颯太は「うん」と頷いたが、立ち上がるのがしんどそうだ。 「山川先生、すみませんが個室のドアを開けていただけますか?」 俺はすぐに颯太をソファから横抱きにして抱えた。 先生はドアを開けると、素早くベッドカバーと掛布団をめくって準備してくれた。 靴を脱がせ、そっとベッドに横たえる。 颯太はもう目を閉じていた。 身体から力が抜けている。 いつからこうなっていた? 気づけなかった。俺のミスだ。 ベッド横の診察カバンから血圧計を取り出して測る。 上が95。低い。 次に熱を測ると、38度2分。 聴診すると、やはり全体に弱い。 「どうしたんですか? さっきまで元気だったのに」 山川さんが心配そうに言う。 「そうなんですよ。迂闊でした。さっきまで本当に普通だったんです。 でも熱が38度2分出ていますね。 こういうふうに、まだ安定していなくて目が離せない。そこが怖いところです。 ここ三日ほどお昼寝ができていなかったので気にはなっていたんですが、元気そうだったんですよね。 喜んでいたんですが……やはり休まなかった分、無理がたたったようです。 こういうところが、まだ“普通の身体”じゃないんですよね……」 「とにかく点滴をします」 「医務室から点滴台を借りてきましょうか?」 「そうですね。あ〜でも、医務室の沢野さんが“暇でしょうがない”と言ってたので、持ってきてもらいますよ」 電話すると、すぐに持ってきてくれるとのことだった。 秘書の川上さんにも颯太の状態を伝え、 明日10時からの広報ミーティングを保留にしてもらうようお願いした。 そこへ沢野さんが点滴台を持って来てくれた。 ベッドのそばにセットしてもらう。 「一体どうしたんですか? つい先ほどまで普通にお元気でしたよね?」 「そうなんですよ。目を離したつもりはないんですが……。注射をするので、ちょっと手を抑えてもらえますか?」 沢野さんは颯太の袖をめくり、腕をそっと押さえた。 肘の内側は固くなっているので、少し手前に刺す。 「なんか……かわいそうな状態になっていますね」 颯太の注射痕を見て、沢野さんがつぶやいた。 「うん、まだ普通の身体じゃないんだよね」 腕には青いあざがいくつも残っている。驚くのも無理はない。 点滴に解熱剤も加えて調整した。 ああ……なんでこうなるかな。

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