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第64話 スタイリスト登場

 食事が終わったら、さっさと会長室に戻った。 もうすごく気疲れしてしまった。 昼休みが終わって、上川秘書に相談した。 「食堂で食事すると他の社員に気を使わせるので、どこに行ったらいいと思いますか?」 「やはり、そうなりましたか。前会長も出前などをお取りになっていました。 それと、タワーの南側のホテルへ抜けるドアが33階にあるんですよ。向こうからはこちらに入れませんが、こちらからは決まった人だけ行けます。お客様を招いてお食事を提供したい時に、ホテルのレストランにご案内するための通路です。 よろしければ、スタイリストが帰られたらご案内しましょうか? お疲れでしょうから、デザートなど召し上がると良いかもしれません」 「ああ、気が利くなあ〜。ぜひお願いします」 聞いただけで、だいぶ気が休まった。 「先生、ホテルに行くの楽しみだね。何を食べようかなあ〜」 「そうだね。さっきのランチは食べた気がしなかったよ」 *** やがてスタイリストがアシスタントを2名連れてやってきた。 今度は広報の小松さんも一緒だ。 キャスター付きのハンガーラック1台と、段ボールを台車に乗せている。 「初めまして、スタイリストの水野智花と申します。 こちらはアシスタントの浜野洋子と矢島百合でございます。どうぞよろしくお願いします」 「一昨日にお話を頂いたので、急遽手に入るものだけをお持ちしました。 あのう、颯太様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」 「はい、いいですよ。かまいません」 「ありがとうございます。では颯太様のサイズと、佐久間先生のサイズや写真を頂いて、普段着に近いけれど気楽に着られるものをお持ちしました。 フォーマルな装いもそのうち必要になるでしょうから、それはこれから急ぎご用意いたします。 今日は“お休みの日の外出”を想定した服、散歩やスーパー、カフェに行く時の服装になります。 おうちを一歩出られる時は提案書がありますので、ぜひそれに合わせてお召しください。 外に出た途端に写真を撮られると思っていただいた方がよろしいかと思います」 そこから、颯太の5日分のコーディネート、俺には会社用のスーツ2着、ブレザー2着、合わせるズボン。 カジュアルすぎず、会社にも着て来られるデザインだ。すごくおしゃれだ。 靴も二人分で3足ずつある。 颯太にはバッグもあり、俺にも颯太とお揃いの斜め掛けボディバッグがあった。 颯太がすごく気に入ったようだ。 やはり颯太はスタイリストに慣れているんだな。 他にも色々セットされたものがあった。 正直、これ全部着こなせるのか? 不安だ。 これはどうみても素人の世界じゃない。 ため息が出る。 唯一、説明書と写真が付いていて、その通りに着ればいいらしい。 それだけが頼りだ。 「これはカフェに行く時のスタイル」まで書いてあった。完璧すぎる。 試着や説明を受けて、1時間ほどで終わった。 荷物は帰りに広報スタッフが運んでくれるらしい。 また手間をかけて申し訳ないよ。

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