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第65話 33階の扉の向こう
「颯太、もうお茶しに行こうよ」
「うん、俺もそうしたい。ちょっと疲れた」
上川秘書の先導で33階へ。ここは重役フロアだ。
分厚いドアを開けると、いきなりホテルの内部になっている。
少し歩くとエレベーターホールがあった。
「33階にレストラン、6階にカジュアルレストラン、5階にカフェがあります。全部ホテル内です。どちらにされますか?」
「カフェでいいよね?」と颯太。
「じゃあ、カフェでお願いします」
エレベーターで5階へ。
「こちらはホテルのフロント階になります」
窓が大きくて、とても明るい。
ミツワの会社はタワーの北側なので、こういう明るさはない。
「上川さん、ありがとう。勝手に帰るのでここまでで大丈夫です」
「はい、かしこまりました。お帰りの際はSPがご案内いたしますのでご心配なく。ごゆっくりお過ごしください。失礼します」
カフェの入り口には案内スタッフがいたが、SPに慣れているようで任せていた。
スタッフは最後尾についてくる感じだ。
「席はこちらでお願いします」とSP。
窓側だったので良かった。
すぐに水とメニューが運ばれてきた。
「先生、なんだかここのスタッフはSPに慣れてるみたいだね」
「ふ、そうだね。多分、前会長も利用してたんじゃないかな?」
「颯太、何にする?」
「ええ‥‥‥っとね。あんこの入ったパフェにする」
「はは、いいねえ。じゃあ俺もそれにするよ」
甘いものがすごく欲しかった。
二人で堪能した。
コーヒーも頼んだが、ボーイさんが「お代わりはいかがですか?」と聞いてくれる。
颯太は温かい紅茶。ガラスのポットに入っていて、ウォーマー付き。
最高だ。こういうところがホテルはいい。
「颯太、お昼ごはんもここにしようか?」
「うん、そうする。でも高いんじゃないの?」
「任せとけ。気を使うより100倍ましだよ」
たとえ二人で昼食が1万円かかったとしても、月に22万。
いいさ。このくつろぎが得られるなら惜しくない。
……俺はミツワに来て金銭感覚が狂ってしまったようだ。
楓たちには言えないな。
回りを見ると、皆ホテルの客のようで、ゆったりした雰囲気だった。
そこへなんと、別のSPを連れた客人がやってきた。
「颯太、見ろよ。SPに先導されてる人が来たよ」
颯太も「え?」とそちらを見た。
「あの人、誰かな?」
「多分ね、政治家だと思うよ。秘書らしき人を三人くらい連れてるし」
やっぱり一人では行動しないんだな。
見習わないといけない。
「颯太、いいか。あの人も秘書を三人くらい連れてるだろう?
だから颯太も絶対、一人で行動したらダメだよ。分かった?」
「うん、分かった。俺もう一人でトイレも怖くて行けないよ……こんなことでいいのかな?」
「颯太はそれでいいの。大丈夫。
だからさ、俺がトイレに行く時は颯太がついてきてくれない?」
「ええ??」
ふたりでぷっと笑った。
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