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第67話 CMソング
山川弁護士の個室が、こじんまりと出来上がった。
ドアは廊下側に一か所だけだ。
まあ、小まめに連絡を取ればいいだけだ。
朝は会長室に集まって挨拶をし、上川秘書から1日の流れを聞く。
終わると、山川先生はご自分の部屋へ。
なんだかいつもより笑みを浮かべていた。
確かに、部屋を分けてみると正直快適だ。
なんせ颯太はいつも俺とくっついている。
上川秘書がノックしたら、あわてて離れる。
そして今朝も、いつもの広報スタッフ5人がやってきてミーティングをしていた。
どうしても5人なんだね。
聞いてみると、動画、SNS、ファン対応と戦略、グッズ企画・製作・販売、マスコミ対応、そして俺たちのイメージ作りまで、仕事を分担しているらしい。
今度からグッズの販売もHPで始めるそうで、忙しいようだ。
グッズはデザイナーに頼んでTシャツやトレーナーを作っているらしい。
なるほど、仕事は“作る”ものなんだな。
患者が来るのを待つ病院とは大違いだ。
それで5人が来ることになるのか……。
だから担当のない加納課長が電話番なんだ。ちょっと面白い。
颯太が早速発言した。
「あのう、ミツワのCMソングって要らないですか? 要るなら作ろうと思うんですが……」
「えー?」とみんな笑顔で顔を見合わせ、喜んでパチパチと拍手していた。
颯太も“見た?”とばかりに俺にちらっと視線を向けた。
「じゃあ、早速CMの企画を立ち上げて、曲の長さをお伝えしますね」と山下さん。
「あ、でも普通に曲を作っていただいて、その一部分をCMに回すのも有効だと思いますよ。曲はアルバムにも回せますし」と小松さん。
「颯太さんはCMソングだけの人じゃないから、曲の一部を使った方が長い目で見ると宣伝になりますよ」と岡本さん。
「あとは曲ができてから、それに合わせてCMの映像や台本を作ることもできます」と石井さん。
「はい、分かりました。ではそうしましょう」と颯太が快諾した。
本当にこの広報スタッフはツーと言えばカーだな。
決まるのが早い。
***
社員たちが帰ると、颯太はすぐキーボードの前でイヤホンをつけて弾き始めた。
曲ってこうやって作り始めるのか?
間近で見るのは初めてだ。
やがて昼休みになった。
行き先はもちろんホテルだ。
「颯太、今日は何を食べたい?」
「う〜ん、今日はうどんかそばがいいな」
「あれ? ホテルにあったかな?」
上川秘書に聞いた。
「はい、ただいまメニューをお持ちします」
「え? 颯太、メニューを持って来てくれるんだって」
「え〜信じられない」
そして持って来てくれた。
「おうどんやお蕎麦でしたら和食レストランがあります。ただ、単品でも小鉢や天ぷらが付くかと思います」
「ああ、俺そんなに食べられないかも」
「でしたら、ホテルの向かい側にお蕎麦屋さんがありますが、そちらに行かれますか?」
「はい、そうしたいです」
「ではSPに話してきます」
その結果、33階でホテルに移動。
そこから1階までエレベーターで降り、正面玄関から出てSPが確認して、道向かいのお蕎麦屋さんに行った。
そこは道路幅が5mだから、渡っても大したことはない。
でも、もう少し広い道路だと「車移動」と言われた。うへっ。
お蕎麦屋さんはこじんまりとしていたが、清潔感のある風情で良かった。
お蕎麦も中々おいしかった。
出前をするのか聞いたら、ミツワの前会長だけ特別にやっていたらしい。
なるほどね。
でも颯太が名誉会長であることを言ったら、
「いつでもいいですよ」と言ってくれた。
良し、これで1つ確保したぞ。
さて明日は土曜日だ。
冷蔵庫の整理と、中身を空っぽにしないといけない。
あさっての日曜日は、楓が計画した“壮大なSP警護を味わう買い物ツアー”の日だ。
そこで買い物をしよう。
今夜は買い物メモを作らないといけない。
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