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第75話 大学初日
翌日、颯太は7時50分に家を出て大学へ行った。
SPが付いているからトラブルの心配は要らないだろう。
本当にそれはありがたいと思う。
普通の大学生活って、友達やサークルなど楽しい付き合いがあると思う。
でも颯太はSP付きだから、誰からも話しかけられないんじゃないか。
周りから見れば普通に引くよね。
それでも勇気を出して声を掛けてくれる友だちが出来るといいな。
もっと体力が出たらサークルを薦めてみよう。
俺は午前は早めに病院に行った。
父が「無理して出て来なくていいぞ」と言ってくれたけど、そういうわけにもいかないだろう。
久しぶりに病院内を見回りに行くと、バース科の友永先生とばったり会った。
「その後の颯太君はいかがですか?」
「はい、大分落ち着いてきています。今日から大学に復学しました。週に3日の午前だけなんです。でも次の診療日がもうすぐですね」
「はい、改善は見られますか?」
「う〜ん、そうですね。それほど感じないですね。まだ分からないというところです」
「もう少し強いホルモン剤もありますよ。今度採血してホルモン値を調べて、まだ効果が足りないようなら、それを試してみましょう」
「そうですね、よろしくお願いします」
そうだ、確か颯太の診療の予約があった。
携帯で見ると今週の土曜日だ。忘れないようにしよう。
……待てよ。確かにヒートは来てないけど、昨日は颯太から求めてきたな。
今までは俺が一方的だったのに、それはもしかしたらホルモン剤の効果なんだろうか?
まさかね。そんなに早く効くわけないだろう。
これまでの病院の売り上げ推移を調べた。
父の言う通り、すごく順調だ。ありがたい。
やはり土地柄なのかもしれない。
今でこそファッションで有名になった人気の街だが、昔はただの静かな住宅地で、実家も奥にある。
ただし佐久間総合病院は交通量のある表通りにある。
大きいので目立つし、三次の救急指定病院でもある。
救急車は時間に関係なくどんどんやって来る。
他に特色としては内分泌に関して有名で、この専門の先生が15人以上集まっているから、患者も全国から紹介されてやって来る。
そういう遠方から来る患者や、危篤状態の患者家族のために、ワンルームのマンションが1棟まるごとある。
コンドミニアムのように台所道具も付いているから困らない。
これはすごく喜ばれている。
学会の連絡やメールなどをチェックしていたら、あっという間に10時半になった。
颯太の昼食を作らないといけない。
早く帰ろう。
結局仕事にほとんど集中できていない。
こんなことでは先が思いやられる。
そそくさと家に帰った。
冷蔵庫を覗いてカレーピラフを作ることにした。
干しブドウを戻し、ピーマンやニンジン、玉ねぎ、ウィンナなどを刻む。
サラダやスープを作り、颯太の帰る10分前から炒めよう。
まだ20分ある。でも頭が空白だ。
俺は一体何をやっているんだろう?
じっと座って時計を見ていた。よし、炒めよう。
作ってテーブルに並べると、ピンポンとチャイムが鳴った。
ドアを開けると颯太が笑って「ただいま!」と言った。
SPにお礼を言ってドアを閉めると、颯太が思いっきり抱きついてきた。
「俺、寂しかった……すごく……」
「うん、俺もだよ。すごく寂しかったよ」
二人で抱き合ったまま動けない。
颯太は胸に顔を埋めて目をつぶっていた。
顎に手を当てて上を向かせて唇を重ねると、
「俺、もうしたくなっちゃった……」
「いつからそうなったの?」
「……ナイショ」
最後にぎゅっときつく抱いてから、
「後でね。先にご飯を食べよう」
手を洗ったら席に着いた。
「スープもあるよ」
サラダにもドレッシングをかけてあげた。
「いただきます」としっかり食べている。
随分元気になったなあ。
これってホルモン剤の効果もあるのかな?
「今日の授業はどうだったの?頭に入った?」
「エヘへへ……何とかね……と言いたいけど、頭からこぼれそう」
「うん、わかった。じゃあ午後は先生に絞られておいで」
「はーい」
それから二人で歯磨き。
家ってやはり落ち着く。
あとは颯太が満足するまで愛した。
いや‥‥‥実は俺もそれなりに満足した。
結果、アラームだけが頼りだった。
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