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第76話 颯太の診察日
今日は土曜日、颯太の一か月ぶりの診察日だ。
10時ちょうどに呼ばれた。
病院ではダークスーツのSP3人がガシっと颯太をガードしているので、目立つことこの上ない。
「お早うございます」
二人で友永先生に挨拶をした。
「はい、その後はいかがですか?」
颯太が聞かれた。
「はい、ホルモン剤の影響かどうかは分からないのですが、食欲が湧いて大分元気になったような気がします」
俺は後ろで笑顔になるのを少し我慢した。
「それは本当に良かったですね。性欲の方はどうですか?」
ずばり聞かれて、颯太が「あ……」と固まった。
そして俺の方を見て助けを求めた。
「少しは反応があっていい方向に行ってると思うし、たまに積極的だなと思うこともあります」
颯太が真っ赤になってうつむいた。
それを微笑ましそうに見る友永先生。
「わー、それは素晴らしい進歩ですね。ちょっと採血をしてホルモン値を調べましょう」
処置室に行って採血をして、また待合室に戻ってきた。
しばらく待って、また呼ばれた。
先生はパソコンを眺めていた。
「ああ、これはいい方向に行ってますね。大分改善されつつありますよ。ではもう少し強いホルモン剤を試してみましょう」
それで解放されて薬を貰って終了だ。
ちらっと薬袋の中を見ると、前のよりさらに大きな座薬だった。
颯太には見せられない。さっさとカバンに入れた。
颯太は病院にいること自体がプレッシャーだ。
「終わったから帰ろう」
「うん」
そこへ楓から電話だ。
「ちょっと、終わったんだったら寄ってよ。目を診たいからさ」
しょうがない。
「颯太、楓が目を診察したいんだって。寄ってもいい?」
「うん」とうなずいた。
耳鼻咽喉科に行くとすぐ呼ばれた。
「お、颯太、元気?」
「はい、お陰様で元気です」
ちょこんと患者椅子に座る颯太。
「じゃあ、ちょっと目を診るよ」
大きな機械を目に当てた。
「う〜ん、大分良いけど、まだ眼振が残ってるから、めまいの薬は続行ね。処方を出しておきます」
「楓姉さん。ありがとうございました」
「え?」と楓が笑顔で俺を見た。
「ま、そういうことだからまた頼むね。楓姉さん」
楓はフフフと笑っていて、新鮮だったみたいだな。
「また来てね〜」と上機嫌だった。
新たにできた弟はさぞ可愛いだろうよ。
多分お昼ごはんの時には、家族で共有されるな。
「颯太、お昼はどうする?」
「う〜んと、どこかに行きたいかな?」
「じゃあ、公園横の中華料理店は?」
「うん、そこが良い」
SPにお願いして行ってもらった。
その店はこじんまりとしているが、常連さんが多いようなところだった。
店主が味にこだわりがあるようだ。
中は土曜日ということもあって、結構人が入っていた。
しかしSPがさっさと先導。
「こちらでお願いします」と言われ、そこに座った。
メニューを二人で見て、迷わず餃子を頼んだ。
その他に小さなコースをお願いした。
確かに餃子はあまり食べる機会がないな。
料理が運ばれてくると、中華でも創作料理なんだな。
どれも量は少ないけど、いろんな料理が食べられるようになっていた。
エビを使った前菜が出た。
早速口にすると、颯太が感激していた。
「先生、ここの料理、美味しいねえ」
「うん、本当にうまいなあ」
「俺、来週もまたここに来たい」
「ふ、良いよ。そんなに気に入ったんだ。夜に来ても良いよ」
「じゃあ、明日の夜は楓姉さんたちと一緒に来たい」
楓達が聞いたら泣いて喜ぶぞ。
「うん、わかった。都合を聞いてみるよ」
早速メールを楓に送った。
「OK、みんなで行くよ。明日6時現地集合。予約よろしく」だって。
「ほら見て、明日の6時にここに集合だってさ」
スマホを見せた。颯太が微笑んで嬉しそうだ。
早速スタッフの人に聞くと、予約はOKだった。良し!
SPの会社に明日の予定をメールで送った。
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