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第78話 寝起きのショータイム

 日曜日の夜は予定通り、みんなで中華レストランに行った。 総勢6人なので、ちゃんと予約席が用意されていた。 「ここ、美味しいんだよね〜」 楓はここの常連らしい。 淳一が颯太に聞く。 「兄貴と一緒に来たんだって?」 「うん、そう。すごく美味しかったから、みんなと一緒に食べたいと思ったの」 その一言で、みんなのハートが撃ち抜かれた。 顔を見れば分かる。ちょっと笑える。 「もう、颯太はなんでそんなにかわいいの?」 楓に続いて、母も言う。 「本当にねえ。昔から家族だったとしても全然違和感ないわよね?」 母もすっかり颯太に夢中だ。 「アイドルの取り合いだな」 これは父のセリフ。 一見冷めてるけど、俺は知ってるぞ〜。 この日はシェフのお任せコースを頼んだ。 「まずは乾杯しようか?」 ビールにしようかな。 「颯太は何にするの?」 「俺はねえ、ジャスミンティーにする」 みんなで乾杯。声が揃うとにぎやかだ。 颯太がずっと笑顔なのが嬉しい。 料理は心づくしの創作料理が並んだ。 俺も初めて食べるような料理があった。 楓と母が喜ぶ喜ぶ。あ、颯太もだ。 ゆっくりデザートまで堪能して、最後は父が全部ご馳走してくれた。 「やったー!」と全員が喜んだ。 気前がいいなあ。 今日のお任せコースは一人15,000円だ。 俺が払おうと思っていたのに。 食後は少し夜の公園を歩いた。酔い覚ましだ。 人気の広い公園で、夜でも街灯が明るい。 野球場ではどこかのチームが野球をしていたので、少し見ていた。 ローラースケートをしている人、ダンスの練習をしている人もいて、なかなか賑やかだ。 颯太は俺と手を繋いでいて、ずっとくっついて離れない。 まあ、いいんだけど。 そんな俺たちの先導がSP。後方にもSP。 颯太の真横にもSPがいる。 歩く時も微妙な距離感で、颯太から1mくらいか。 家族もSPにだいぶ慣れてきたようだ。 その夜は気分よく散会した。 *** 翌週、颯太は決められたスケジュールでも大丈夫そうだった。 元気になってきたのが嬉しい。 でも油断は禁物。毎朝の診察だけは欠かさない。 もう少し寝起きが良いといいんだけどねえ。 俺が先にベッドを抜けても気づかない。 「颯太、おはよう。時間だよ、起きるよ」 「聞いてるのか?起きないと学校に遅れるよ」 少し揺すってもダメ。 起きても寝ぼけている。 そのうち俺をベッドに引き込もうとする。 「こら、起きてるだろう?」 うふふふ、と笑っている。 しょうがないので布団を剥がし、両手を引っ張る。 それでも目をつむったまま。 「楽しんでるのか?」 「うん」と頷く。……遊んでるな。 「はい、おしまい。俺はもう知らない」 さっさと部屋を出ると、起きてくる。 毎朝のショータイムだ。 洗面を済ませて朝食。 「今日はホットサンドだよ」 「いえ〜い!」 中身は、ポテトコロッケの具にカレー粉を少し混ぜて、ケチャップとソースを少し入れたもの。 「颯太、お昼は何食べたいの?」 「う〜ん、餃子」 「は?昨日食べただろう?」 「でもまた食べたいもん」 「OK、作っておくよ」 買い物に行くべきか……いや、皮を作ってみるか? ひき肉なら冷凍がある。よし、そうしよう。 「颯太、餃子は水餃子にしてもいい?」 「うん、いいよ」 そしてSPに守られながら大学へ。 俺は車で病院へ向かった。 友永先生から「新しい薬はどうだったか?」とメールが来ていた。 今週末の金曜の夜に使う予定だと伝えた。 ついでに「あれを半分に切って使ってはいけないか?」と聞いてみた。 一度にヒートになると颯太が大変だろう。 すぐに返信が来た。 「それでもいいけど、残りは早急に使ってください」とのこと。 そりゃそうだよな。 切って使うなんて反則だ。 ああ……まだ迷う。

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