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第81話 甘えんぼとMV

今日は金曜日。 颯太はどこか心残りな表情で振り返りながら大学へ行った。 俺は病院だ。徒歩5分だから歩いて向かう。 郵便物やメールのチェック、売り上げの推移、職員からの提案書、患者さんからの投書箱── いつものように確認していく。 理事の父とも少し話をしてCMの感想を聞いた。 「やっぱり歌手なんだねえ。なかなか良かったじゃないか」 そう褒めていた。 気づけば時間はあっという間に過ぎ、10時半には帰宅した。 ランチは何にしようか。 冷蔵庫を覗いて、和風パスタに決めた。 キャベツ、玉ねぎ、キノコ、ウィンナーを炒めて、最後に海苔を散らす。 醤油も少し入れたから、和風の感じは出ているかな。 そこへ、時間通り颯太が帰って来た。 SPにお礼を言ってドアを閉めると── 待っていたようにピターッと張り付いてきた。 「寂しかったのか?」 うん、と頷く。 「手を洗っておいで。パスタが冷めるよ」 二人で手を合わせて食べる。 スープも和風で、豆腐とねぎを入れた。 デザートの果物を食べ、食後のコーヒーも飲んだ。 昼寝の時間なんだけど、今日はあまり時間の余裕がない。 台所の後片付けをしていると、そっと寄ってきて、 「ねえ、先生、一緒に寝てぇ〜」 と洋服の端をつまんで言う。 声からして完全に甘えている。 「うん、そうしよう」 一緒に横になると、昨日のことがあったからなのか、 颯太はいつも以上に甘えてきた。 うれしいんだけど、なんというか......、 今度は俺をあまり甘やかさないでという気持ち......。 もうセーブが利かなくなる。 この駄々洩れの可愛さをどうしたらいい? そして横になると、俺の手を自分の中心に持って来る。 当たり前のように‥‥‥。 「早く__」って催促だ。うれしすぎる。 昨夜は前のホルモン剤を入れたからか、すごく気分が高揚しているようだ。 随分効果が出てきている。 もちろん颯太が気持ち良くなって、すーっと眠りにつくまで付き合う。 俺も眠りそうになるけど、ダメ、この時間が勿体ない。 颯太の寝顔をもっと見つめていたい。 そうだ、アラームをかけないとね。 午後は家庭教師の勉強がある。 問題は今夜だ。 実はまだ、新しい薬の量について迷っている。 今夜使って、土曜と日曜で落ち着くのか? 月曜の朝、大学に行けるだろうか......。 こればかりはやってみないと分からない。 悩んでも仕方がない。 よし、やはり半分にしておこう。 うん、決めた。 それで土曜までに収まるなら、次回は全量を使おう。 *** 16時に颯太を迎えに行くと、広報スタッフが会長室にやって来た。 「ミュージックビデオが出来たので、ぜひご覧ください」 随分早いね。撮影したのは昨日なのに。 またパソコンからテレビに飛ばして、大画面で見る。 「ええ? こんなに俺ってカッコ良かったかな?」 颯太が目を輝かせて喜んだ。 俺だって、あんぐりしたまま見とれてしまった。 「すごいねえ。本当にカッコ良いよ。歌もいいしね。編集がうまいねえ」 「恐れ入ります!!」 広報スタッフ5人が声を揃えた。 本当にこの5人は統率が取れている。感心するよ。 そして、律義に電話番をしているであろう加納課長も、いい人だ。(笑) ファイルを受け取り、携帯から楓に送った。 楓に送れば家族全員が見るからね。 「もう三浦社長からもOKを頂いているので、早速この後にUPいたします」 「はい、分かりました。皆さん、本当にお世話になりました」 颯太も、 「ありがとうございました。本当にうれしいです!!」 と頭を下げた。 ー*-*ー 筆者より 都合により、3月5日より3月17日まで1日3話更新します。 よろしくお願いします。

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