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第83話 チョーカー

翌朝、目が覚めると、颯太が穏やかな表情で俺の胸の中にいた。 可愛い寝息を立てて眠っている。 まるで赤ちゃんみたいだ。 起きるに起きられない。 動くこともできない。どうしようか。 ……幸せな悩みが少しずつ増えていく。 そっと額にキスをすると、颯太が目を覚ました。 「おはよう」 ちょっと恥ずかしそうに「おはよう」と返ってきた。 「起きようか?腰が痛くないか?」 「‥‥‥う~ん、まだ分かんない」 「起きてみようよ」 先に俺が起きて身体を起こしてやった。 「あれ?......なんか変」 そのまま両手を掴んで立たせた。 「あれ?なんだか後ろがヌルヌルする」 うぷっ、笑った。 「ごめん、それ昨日塗った薬だから気にしなくていいよ」 「え、薬を塗ったの?」 途端に恥ずかしそうに俺を見つめた。 「うん、だって痛くなったらかわいそうだから」 今度は少し泣きそうなj表情になった。 「もう~恥ずかしいよ~」 俺に抱きついて顔を隠した。 「ふふ、じゃあ、痛くない?」 「うん、痛くない。他もなんともない。全然平気」 頬を胸に付けたままで答える。 「ふ~ん、オメガの身体って不思議だね」 「うん、俺もそう思った」 少し安堵したようだ。 「顔を洗って朝食にしようよ」 「はーい」 可愛くて、つい抱っこして洗面所まで運んでしまった。 「ええ?もう、やりすぎ!」と言いながらも、クスクス笑っている。 だって、この世で一番かわいいんだから仕方ない。 そっと洗面所で降ろした。 「朝食は何が食べたい?」 「ええ〜とね、フレンチトーストがいい」 「OK」 フランスパンしかなかったが、輪切りにして卵液にたっぷり浸す。 バターを惜しまず使って焼き上げた。 「颯太、飲み物は? トースト甘いよ」 「じゃあねえ、ハーブティーにする」 「うん、カモミールにしよう」 ミカンのはちみつを出す。香りが最高だ。 これをフレンチトーストに掛けると美味しい。 こんがり焼けたフレンチトーストは、見ただけで美味い。 「わ〜おいしい、最高だね」 颯太が嬉しそうに言った。 「ねえ、今日の予定を言ってもいい?」 「うん、いいよ」 「10時になったら、百貨店の外商の担当さんに電話して、チョーカーを持ってきてもらおうと思うんだ。こっちから行くと、日曜だからSPも必要だし、混んで大変だろ? 持ってきてもらった方がいいよね」 「先生って気が早いね......」 クスクス笑っている。 「だって、今夜にもヒートが始まるかもしれないんだよ。早くしないとやばい」 「はーい」 可愛いんだけど、颯太はとりあえずの返事をしていないか? ちょっと不安。 「それとね、午後の颯太の昼寝の時間に、ちょっと実家に行ってくる。家族会議をしたいんだ。悪いけど、颯太は留守番しててくれる? すぐ帰ってくるから」 「うん、わかった」 * 外商に電話したら、なんと1時間後には宝石売り場の担当者と一緒に来てくれた。 なんて早いんだ。電光石火だな。 「毎度ありがとうございます。吉田でございます。お電話ありがとうございました。早速、宝石売り場の担当者と見本をお持ちしました」 颯太がなんだか照れくさそうにしている。 まあ、オメガ用のチョーカーを頼んだからね。 「早速ご覧くださいませ」 リビングのテーブルに見本を広げてくれた。 首のサイズも希望も、事前に伝えてある。 一番良さそうなのは、シリコン製のマットな素材だという。 色は黒。留め金には黒の指紋認証の鍵をつける。 宝石売り場の責任者が黒い宝石箱を開いた。 「ダイヤを中央に一つ入れるということでよろしいでしょうか?」 颯太が「ええーー?」と目を見張る。 「チョーカーの幅は8ミリが一番お似合いになりそうですが、いかがでしょうか?」 颯太の首につけてみる。 「どう? きつくない?」 颯太は首を横に振った。 「ではダイヤですが、どれくらいの大きさがよろしいでしょうか? バランスとしては0.4カラットから1カラットまでございますが……」 「8ミリ幅だと、どれくらいがいいですか? あまり目立つのもどうかと思うけど、芸能活動もしてるし、さりげなく目に入るくらいがいいかなと思って」 「はい、では0.4カラットはいかがでしょうか。とても上品だと思います」 「颯太、これでいい?」 「はい、すごく素敵」 「では、これでお願いします」 「毎度ありがとうございます。出来上がりは1週間後になりますので、またお持ちいたします」 「それと、私が個人的に支払うので、会社とは別にしてほしいのですが」 「かしこまりました。別枠でカードをご用意いたしますのでご安心ください」 担当者たちは帰っていった。 「先生、ダイヤってそんなに贅沢しなくてもいいのに……」 「贅沢じゃないよ。必需品だ」 午後からは実家に向かった。 朝一でメールをしておいたから、みんな待っていてくれているはずだ。

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