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第90話 佐久間だらけ
今日のたい焼き騒動で颯太は興奮してしまい、昼寝をする時間がなかった。
しかし14時からの白石先生にはたい焼きを渡して喜ばれていた。
ついでに、俺たちが結婚したことと苗字が変わったことを伝えると、
「おめでとうございます」とまた祝福を受けた。
はぁ……。
颯太の勉強時間に俺は邪魔だから、隣のホテルをぶらつくことにした。
ブラブラ歩いていると、例の外商員から電話がかかってきた。
「予定より早くチョーカーが出来たのでお届けしたい」と言われたので、
暇だし取りに行くことにした。なんせ百貨店は近い。
外商サロンに行くと、担当が待っていてくれた。
チョーカーを見せてもらったら、ダイヤがすごく素敵だ。
颯太がつけたところを想像するだけで、もう~わくわくだ。
カードで回してもらうようお願いして、ついでに名前が変わったことも伝えると、
「え?そうなんですか?おめでとうございます。ええっと、そうするとカードを作り直すことになりますね。苗字が変わられた場合、何か証明できるものはありますか?」と聞かれた。
「あっ、ない。まだです。昨日戸籍の届け出を出したばかりで、まだどこも変更していないんですよ」
担当は「あれ?」という顔をした。
それで、「現金払いだと値引きはできないですか?」
「いえ、できます。大丈夫ですよ」
高い買い物だから10%引きは大きい。
「ではデビットカードでお願いします」
無事にチョーカーは受け取れたが、ここで大変なことに気がついた。
ブラブラしている暇はない。総入れ替えだ!
まずは自分の戸籍謄本。
颯太が16時に終わったら、そのまま役所行きだ。
しかし時間が惜しい。
地下の食料品売り場に寄って、ブリの照り焼きと和え物を買った。
会社に戻るとまだ少し時間があったので、1階のカフェでコーヒーを頼み、
スマホに変更すべきリストを記入した。
戸籍謄本10枚 ⇒ 印鑑証明10枚 ⇒ マイナンバーカード
⇒ 保険証 ⇒ 免許 ⇒ 銀行通帳 ⇒ クレジットカード ⇒ 外商カード。
ミツワの総務で苗字変更。マンションのフロントで管理関係。
佐久間病院内の総務とネームプレート、玄関の医師一覧表のプレート。
待てよ、不動産の書き換えも必要か?
権利者の名前が変わったんだもんな。
もしかして権利書の書き換えか?司法書士に頼まないといけないかも。
お金がかかるじゃないか!
急に頭痛がしてきた。
友人知人への苗字変更のお知らせ。ああ〜やだよ〜。
なるべくメールで済ませよう。
青天の霹靂とはこのことだ。
嫁に行く女の気持ちになった。
早く会長室に帰ろう。
16時に会長室に戻ると、勉強は終わっていた。
帰る支度をしていると、上川秘書がやって来た。
「院長先生、苗字が変わられているので、こちらが優先順位で行き場所と必要な手続きを書いた一覧表です。こちらでできることはいたしますが、ご自身でないとできない変更もありますので。よろしくお願いします」
と笑顔で一覧表を渡された。
……さっきの時間はなんだったんだ?
「ご丁寧にありがとうございます、助かります」
「さあ、颯太、市役所に行くから付き合ってくれる?」
「うん、いいよ」
「ではお先に失礼します」
「はい、お疲れ様でした」
車に乗る前にプリントを見ると、
役所に行くのに<実印>と書いてあった。
え?そんなもん、いつも持ち歩かないよ。
「颯太、やっぱり実印がないから役所に行けないわ。とりあえず帰ろう」
「うん、帰る」
今夜はプリントを見ながら勉強だ。
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