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第93話 初めての院長室
父のやさしさで、美味しい寿司をご馳走になった。
新しい白衣もできて、プレートも貰ったし、なんて配慮なんだ。
本当に父を尊敬するよ。
理事長室を出た。
「颯太、あまり時間がなくなったんだけど、院長室でちょっと横になる?」
「うん、いいの?」
「いいよ、すごく静かだよ」
手を繋いで連れて行った。
すれ違うナースや医師が「おめでとうございます」と声を掛けてくれる。
最上階の奥に院長室がある。
「颯太、ここが院長室だよ」
「わあ、ソファが気持ちよさそうだね」
「颯太はいつでも来ていいんだよ」
二人で室内の洗面所で並んで歯磨きをした。
それから颯太は、早速ソファに横になっていた。
クローゼットからブランケットを出して掛けてあげる。
「時間になったら起こすから、それまで眠っていいよ」
すぐに目を閉じていた。
その間に郵便物やメールなどを処理した。
時間になったら車まで送った。
「あとで迎えに行くよ」
「うん、待ってるね」
ここで手を振るなんて新婚さんだなと思いつつ、振ってしまう。
だって颯太がいつまでも手を振るからしょうがない。
もう誰に見られてもいいよ。
***
今週はバタバタだったけど、周りの協力のおかげでだいぶ進んだ。
16時、颯太を迎えに会社へ。
「あ、先生。お迎えをありがとう」
颯太が照れながらも嬉しそうにする。かわいすぎる。
「颯太、今週は忙しかったね」
「うん、あ、そうだ、楓姉さんたちを実家に来てもらいたいな。日曜日がいいかなあ?」
「そうだったね。聞いてみるよ」
メールすると、あっという間に意見がまとまった。
楓は「絶対見に行きたい!!」と返事。
「じゃあ、小林さんに日曜のお昼に伺うって電話しようかな?昼食をご馳走になろうか?この前断っちゃったからさ」
「うん、それがいいよ。みんな喜ぶと思う。あのね、由紀さんが作るカレーってすごく美味しいんだよ」
「へえ〜そうなんだ、食べてみたいね。颯太、カレーのリクエストをメールしておいてくれる?」
「いいよ」
そういうわけで、日曜日はもう予定ができた。
「颯太、土曜日は携帯の店に行こうと思うんだけどいいかな?」
「うん、いいよ」
「ありがとう、じゃあ帰ろう」
帰りに食料品を少し買って帰った。
「颯太、今夜はお好み焼きにしようと思うんだけど、食べる?」
「うん、好きだよ」
二人で材料を切って、テーブルにプレートを出した。
「先につまみにパリパリチーズ焼きを焼こうか?」
「うん、面白そうだね」
動画で見たんだけど、餃子の皮にとろけるチーズとハムを乗せて、その上にまた皮を乗せて焼く。
後でオリーブ油をかける。
ぱりっと良い色に焼けたら出来上がり。
あとはノンアルのドリンクで乾杯だ。
つまみにちょうどいい。
颯太が「夕飯はこれでいいよ」と言いだした。
「じゃあ、中身を変えたのも焼こうか?お餅も入れる?小さく切ってさ」
「うん、入れる。明太子も入れたいな」
二人で次々にアイデアが出て楽しい。
あとは冷凍しておいたおにぎりをレンジで加熱。
あとはホットプレートで焼きおにぎりにして食べた。
お醤油を垂らしたから香ばしい。
もう満腹だ。
颯太が寝るといけない。
お風呂を溜めながら、サッと片づけた。
今夜はどうしようかな。
日曜に出かけるなら安全策を取らないといけない。
今夜はいつものホルモン剤にしよう。
それだったら土曜日には携帯の店に行けるな。
よし、予約を入れておこう。
湯が溜まった。
「颯太、風呂に入ろう」
返事がない。
ソファを見に行くと、もう眠っていた。
ああ〜遅かったか。はぁ……。
いや、しかし仕事はちゃんと遂行するべきだ。
颯太をベッドに連れて行って、ちゃんと薬を入れた。
あとは、寂しく一人で風呂にはいるか。
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