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第94話 佐久間家・颯太の実家へ
今日は俺の家族が颯太の実家にお邪魔する日だ。
SPの先導で行くから、俺たちの車の後ろから家族の車がついていくことになった。
颯太の実家は大学に近い、古い街の高台にある。
我が家から車で30分ほどだ。
スムーズに立花家の門に入った。
3台中に入っても駐車場の心配をしなくていいのが助かる。
車から降りると、玄関先に家政婦さん達がずらっと並んで待っていてくれた。
それにこっちが6人。急に賑やかになりそうだ。
「こんにちは」皆で声を揃えた。
家政婦さん達も緊張しているようで、一斉に深くお辞儀をしてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。どうぞお入りくださいませ」
小林さんが先導してくれる。
「うわ〜すごいねえ〜」
楓がびっくりして周りを見回している。
「マジすごいな。どうなってるんだろう?」と淳一。
「なんか、この辺の1区画全部囲ってあるみたいだよ」と俺。
「凄すぎてなんと言っていいか分からないわ。旅館の上を行くよね?」
母も驚いていた。
「樹木がすごいね。それだけで空気が良いよ」と父。
「さあ、入ろうよ。待ってくれてるよ」
ゾロゾロと玄関に入っていく。
最初の俺と同じで、みんなきょろきょろして前に進まない。
「さあさ、どうぞ。お食事の支度が出来ております」
筆頭家政婦の由紀さんが案内してくれた。
ダイニングテーブルに座る前に、家族を紹介した。
「では紹介しますね。こちらが父で、佐久間総合病院の理事で内科医の佐久間啓介です」
「初めまして。陽一が大変お世話になっています」
「その隣が母の佐久間美奈子、弟で内科医の淳一、妹で耳鼻咽喉科医の楓です」
「初めまして。どうぞよろしくお願いします」
みんなで声を揃えた。練習したのかな?
「佐久間家の皆さま。颯太様を大変かわいがって頂いて有難うございます。私は立花家の執事で小林と申します。
私ども使用人一同、心より感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いします」
小林さんが代表して挨拶してくれ、その後家政婦さん達を紹介してくれた。
そこで母が手持ちのお土産を差し出した。
「あのう、つまらないものですが、こちら手土産にお持ちしました。どうぞ皆さまでお召し上がりください」
母が渡したのは、マカロンのセット2箱とトリュフチョコレートだそうだ。
「ご丁寧にありがとうございます」
小林さんが受け取ってくれた。
「どうぞみんな座ってください」
颯太が気を使って家族に声を掛けた。
オードブルかな?
濃いグリーンのガラス皿に、何種類もの料理が美しく盛り付けられている。
「まあ、なんて美しいんでしょう!」
母の第一声。
「すごいねえ〜、うちではこういうの出たことないよね?」と楓。
「きれいすぎて食べるのが勿体ないよ」と淳一。
「もう二度と食べられないかもしれないし、しっかり頂きましょう」
母の言葉に吹き出した。
家政婦さん達もクスクス笑っている。
「お義母さんもお義父さんも、淳一兄さんも楓姉さんも、いっぱい食べてってね」
「まあ〜颯太ってやさしいわねえ。いっぱい頂きますよ〜」と楓。
「お飲み物は何がよろしいですか?」
由紀さんが声を掛けてくれた。
「ビールにする?ノンアルにする?」
俺がまとめる。
「じゃあ、ビールを頂きましょうか」と父。
「ノンアルがいいな」と楓。
「じゃあ、ビールを1つと、あとはみんなノンアルでいい?」
うんうんと皆が頷く。
「かしこまりました」
ドリンクが揃ったところで、乾杯の音頭を父に頼んだ。
「じゃあ、陽一と颯太君の結婚を祝して、乾杯!」
「おめでとう〜!」
「じゃあ、早速頂こうよ。いただきます」
俺が声を掛けて、みんなで手を合わせた。
季節感たっぷりの料亭のようだ。
どれもこれも美味しい。
焼き物、蒸し物、揚げ物……どんどん出てくる。
「すごいわねえ〜めちゃめちゃ美味しいよ」
「楓は感激したんじゃない?」
「そうよ。だって普段のお昼は病院で定食かラーメンだもん。感動だよ」
「あ、写真に撮っておけばよかった……」と楓。
「いいねえ〜こんなにうまいものを作ってくれる嫁さんが欲しいよ」と淳一。
「あのねえ、小林さん、うちの淳一と楓はまだ独身なんですよ。
どなたか良い人がいたら紹介してください。医者って中々出会いがないんですよね」
「そうなんですか?お医者様なんですから、人気がおありだと思っていましたが」
「兄貴だって、颯太と会う前は誰もいなかったもんね」
「うるさい。バラスなよ」
颯太がクスクス笑っている。
「颯太はちゃんと食べてる?」
母が心配そうに見る。
「うん、食べてるよ」
「颯太は大分食べられるようになったよね」
俺がアピールしておいた。
「こんなに颯太様が召し上がるのを拝見するのは初めてです。ね?」
小林さんが由紀さんに声を掛ける。
「本当にねえ。颯太様、今が楽しいんですね。佐久間家の皆さま、本当にありがとうございます」
ステーキの後、なんとカレーが出てきた。
「由紀さんのカレーってすごく美味しいんだよ。みんな食べてみてね」
颯太の自慢だ。
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