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第95話 由紀さんのインドカレー

「へえ〜おいしそう」 楓が真っ先にカレーを食べた。 「え、え、うま〜い!なんでこんなに美味しいの?」 「どれどれ」 母も一口食べて、 「わっ、すごいねこれ。何が違うんだろう?」 さすがの母も感心していた。 淳一はさっさと食べ終わっていた。 「うまかった。俺、毎日でもいける」 「確かにこれは凄いね。一体どうやって作られたんですか?」 父が聞くと、由紀さんが嬉しそうに微笑んだ。 「これはインドの友人に教わったレシピを、私なりに日本向けにアレンジしているんです。  玉ねぎをよく炒めて、合いびき肉と鶏もも肉の両方で旨味を出します。  スパイスは煮込むと香りが飛ぶので、半分は最初に油で温めて、  残りは仕上げに加えるんですよ。  本場より少しとろみをつけて、食べやすくしています」 みんな「へえ~」と感心していた。 「颯太は作り方を習ったの?」 颯太は首を横に振った。 「わあ、残念だなあ〜。これ売れるよね?」 うんうんと皆が頷く。 「あのう、よろしければお土産にお持ちになりますか?たくさん作っておりますので」 「はい!」 全員が元気よく返事した。 おかげで持ち帰れるぞ。 その後は、手作りの柚シャーベットと数種類のフルーツ、焼き菓子の盛り合わせが出てきた。 それと先ほど差し上げたマカロンも、 「お持たせですが、」と一緒に出された。 「うわ〜どれもこれも美味しいよ。まるで一流レストランだねえ」 最後に美味しいコーヒーが出された。 これがまたうまい。 「あれ?このコーヒー、この前頂きましたっけ?」 「いえ、あれとは違うものを今日はお出ししています」 「颯太、このコーヒー凄くうまいと思わないか?」 「うん、美味しいけど、俺は由紀さんのチャイの方が好きなんだよね」 「え、チャイ?うわ〜いいわねえ」 楓が言うと、 「はい、ただいまチャイをお作りしますので、少々お待ちくださいませ」 「あ〜あ......楓、催促したのか?」 「えへへへ、だって飲みたいんだもん」 家政婦さん達がふふふと笑っていた。 そして待つこと5分。 皆の分のチャイがやって来た。 目の前に置かれると、スパイスの香りがふわっと広がる。 「まあ、なんていい香りなんでしょう」 母が感激していた。 楓はさっさと飲んでいた。 「ああ、美味しい……私が作ったチャイと風味も味も全然違う。なんでだろう?」 「あのう、これは先ほどのインドの友人に教わったんですよ。お鍋でスパイスを入れて少し煮出すんです。私はそこへしょうがのスライスを少し入れます。そこへアッサムの茶葉を入れて、茶葉が広がるまで煮出して、後はお砂糖とミルクを入れてまた温めます。最後に茶こしでカップに注ぎます」 「あ、そうか。まとめて煮出すんだ。私が作ると薄っぽくなるんだよね。ありがとうございます」 そんな感じで食事が終わった。もう満腹だ。 「ねね、颯太、ピアノ弾いてくれない?なんか高級そうなグランドピアノがあるんだけど」 「いいよ」 そして弾き始めた。 え?......これショパンだよね? 美しくも、もう悲しい調べが響いた。 ピアノの音も素晴らしいけど、繊細な演奏が胸を打った。 終わると皆ですごい拍手をした。 「ね、颯太すごいね。これなんと言う曲なの?」と楓。 「ショパンのノクターンで遺作なんだ」 「へえ~美しいわねえ」と母がうっとりとしていた。 「じゃあ、家の中を案内しましょうか?」 颯太がピアノを閉じて声を掛けた。 「見た〜い!!」と楓。 「あら楽しみだわ」と母。 似た者親子だ。 颯太が家中を引き連れて案内してくれた。 颯太の部屋の大きさに、みんな驚いていた。やっぱり同じポイントだ。 それから庭を散歩することになった。 父は樹木をじっくり見て歩いている。 やはり好きなんだな。そして案の定、あの畑でピタッと足を止めた。 「ほう〜野菜を作っていらっしゃるんですね?うまくできてますなあ〜」 控えめに後ろを歩いていた運転手の横森さんが前に出てきた。 「ありがとうございます。庭の手入れや野菜は私がやっています」 「うちにも小さいのですが、ジャガイモとサツマイモだけ作ってるんですよ」 「そうなんですか。それは楽しいですよね」 その後は日本庭園をじっくり見て、池の鯉なども皆で見て回った。 端の方に小さなアパートがあった。 「あれはねえ、住み込みの家政婦さんの家なんだよ」 颯太の説明に、「へえ〜」と声を揃えるしかない。 もう規模が違うんだもん。 適当なところで皆で失礼することにした。 すると人数分のお土産用のカレーを頂いた。 「わざわざすみません。お土産までいただいてしまって」 母が恐縮していた。 「どうもご馳走様でした。本当に美味しかったです」 「今度はぜひ皆さまご一緒にうちに遊びにいらしてください」 「はい、ありがとうございます。伺わせていただきます」 きりがないので、颯太を車に乗せた。 「行くよ」 ようやく皆で引き上げる。 家政婦さん達が並んでお見送りしてくれた。 「ね、颯太、うちの家族、にぎやか過ぎたんじゃない?」 颯太に聞くと、 「そう?いつもと同じだと思うけど?」 「ふ、そうなんだ。 屋敷が大きいから声が響くのかな?」 「あ、そうかもしれない」と颯太 ようやく俺たちはそのことに気が付いた。

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