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第96話 縁談
颯太の実家へ行った翌々日、執事の小林さんからすごいニュースが来た。
家族を招集して理事長室に集まった。
「なあに?忙しいんだけど──」と楓。
「あのね、すごいニュースがあるんだよ。淳一と楓に」
「何だよ、早く言ってよ」
淳一が急かす。
「立花家の小林さんがね、二人に縁談を持って来てくれたんだよ」
「はあ====??」
二人が声を揃えた。
「陽一、早く全容を言いなさい」
父が促す。
「あのね、颯太にピアノをずっと教えてくれてた女の子が、今は音大を出て家でピアノを教えてるんだって。
でもオメガだから、ご両親が心配で外に出したがらないらしいんだよ。
年齢は26歳で、三上紀子さん。すごくかわいらしいんだってさ。
この前の話を聞いていたから声を掛けたら、向こうのご両親がすごく喜ばれて、『ぜひお願いします』って言われたんだって」
「へえ〜そんな子がいたの?会いたいよ〜」と淳一。
「ちょっと待ってよ。私は?」
「あははは、楓も聞きたいか?」
「もういいから早く聞かせてやりなさい」
父が笑いながら言う。
「はいはい。その女性のお兄さんなんだって。三上友則さん、29歳。
大学は俺たちと同じなんだけど、すごくシャイな性格で、やはりオメガだから表に出たがらないんだって」
「へえ、それでその人、何やってるの?」
楓が身を乗り出す。
「お父さんが有名な老舗のハンドバッグ屋さんなんだよ。聞いたことない?」
「あ、三上バッグ店?」
「そう。それでね、バッグのリペアや受注生産を裏でコツコツやってるんだってさ。
大学を出てイタリアに制作の修業に行って、2年前に帰って来たんだって」
「へえ〜そうなんだ」
「楓だと、その繊細そうな若者ではどうかなあ?」
父の心配は俺の心配でもある。
「それ心配だよね?俺もそう思ったよ。でもね、料理は得意なんだってよ。
おまけに家が颯太の家の近所なんだってさ」
「へえ〜。まあ家は大丈夫だな。あとは相性か?」
「でさ、今度の日曜ではいかがでしょうか?って聞かれた。その時に紀子さんと一緒にお邪魔したいって言うんだけど、どう?」
「ちょっと、お兄さんの方は?」
楓が催促する。
「だからさ、シャイなんだよ。いつでもいいから、お店に来てくれたらお話ししたいって言ってるんだって」
「ふ〜ん、そうなんだ。行ってもいいけどさ」
「今時さ、あの立花家の近所で、有名なバッグ店の子供が二人ともオメガだと、そりゃあ親御さんも気が気じゃないさ。外に出したくない気持ちは分かるよ」
父が思いやるように言った。
「お前たちにはぴったりの縁談じゃないのか?会うだけ会ってみなさい。今時探しても中々いないよ。おまけに良家で申し分ないよ」
「はい、分かりました」二人が声を揃えた。
***
そして週末の日曜日。
12時に立花家の皆さんと三上紀子さんがやって来た。
この日のために、料理は家族で十分に打ち合わせをした。
颯太の作った料理が一番喜ばれるだろう。
だから、作るのは俺と颯太、母と楓。
楓は切るだけなんだけどさ。
メスは得意だからな(笑)
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