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第100話 お見合い・2

 挨拶をするタイミングがなかったので、俺は立ち上がった。 「改めてご挨拶をさせてください。 私は立花陽一、こちらは先日結婚した立花颯太です。それから弟の淳一と妹の楓です」 「初めまして。どうぞよろしくお願いします」 淳一たちが声を揃えた。 今度は友則さんが優しく微笑みながら、 「こちらこそ、よろしくお願いします。先日は妹の紀子が大変お世話になったそうで、ありがとうございました。とても喜んでおりました」 「そうですか。うちの方も大騒ぎでしたよ。素敵なお品の数々で、楓が興奮していました」 「もうやめてよ、兄さん……恥ずかしいよ……」 楓が小声で抗議するので、みんなで笑ってしまった。 友則さんはすらっとした長身で、中々のイケメンだった。 オメガは颯太のように小柄な人が多いと思っていたが、ご両親の遺伝なのだろうか? そんなことを考えて感心していたら、楓は恥ずかしそうに俯いていた。 あり得ない。(笑) 「じゃあ、乾杯しましょうか」 さっさと音頭を取った。 「では、今日のご縁を大切に。今後ともどうぞよろしくお願いします。 今夜は楽しみましょう。乾杯!」 それからは、さすがの料理の数々で、持て余すほど次々に出てきた。 凄すぎる……俺の人生で一番だな。 話も弾み、俺は楓と淳一を大いにアピールしておいた。 「友則さんは、楓にはシルバーが似合うとおっしゃってくださったそうですが……?」 「はい。小林さんが皆さんの写真をお持ちくださったんですよ。それでご家族の写真を拝見しました」 「ああ、なるほど。では紀子さんも事前にご覧になっていたんですね?」 「はい、そうなんです」 ニコニコしている。 なるほど、そこで気に入っちゃったんだな。 では俺たちはお邪魔かな? 俺は友則さんにさっさとお願いした。 「よろしければ、楓と連絡先を交換してやっていただけますか?」 これで兄としての重責は果たしたぞ。 「はい、もちろんです。光栄です。楓さん、よろしいですか?」 ああ〜なんて紳士的なんだ。 見惚れる。さすが老舗の家だ。 楓が俺をちらっと見て、うれしそうにしていた。 はー……これでまた決まりだな。後でおごれよ。 そうなると、兄妹同士だから合同結婚式だな。(笑) 一石二鳥とはこのことだ。 いや〜佐久間家は大したことないが、三上家はそうはいかんだろう。 合同だと盛大にしないと収まらないだろうなあ。 まさか帝国大ホテルなんて言い出さないだろうな? そこでふと、<あっ、家!>と困ったことを思い出した。 淳一が「早くマンションをよこせ」と言い出しかねない。 どうしよう……? いや、しかし向こうが用意するというかもしれない。 なんせ三上家もここのご贔屓さんだもんな。 と、いやらしい想像が頭を駆け巡っていた。 やがて最後の水菓子が終わり、お茶やコーヒーを持ってきてくれた。 飲みたい方を言えばいいらしい。 「では、そろそろお開きにしましょうか? お宅までお送りしますよ」 俺は後ろに控えている仲居さんにカードを渡した。 「あ、兄貴……いいの?」 淳一が気を使ってくる。 「うん、任せとけ」 「あ、ちょっとSPに電話だけするね」 待ってくれていた友則さんたちに、 「お待たせしました。では参りましょうか?」 玄関に行くと、「サインだけお願いします」と言われて、 サインをするとそこでカードを返された。 そして女将がわざわざ挨拶に来てくれた。 皆でお礼を言って車に乗り込むと、門まで送ってくれて、 「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」 と頭を下げられた。 はあ……慣れないなあ。 俺はこういう世界が向いていないのかも。 *** その後、十分ほどで三上家に着いた。 また一区画……とまではいかないが、瀟洒な洋風の豪邸だ。 さすが立花家の近所だけある。 門から玄関まで二十メートルはある。 車が二台入ってもなんともない。 奥には大きなガレージが見えた。 玄関からご両親が出てこられた。 俺たちは全員降りて挨拶した。 お母さんから先に声を掛けられた。 「まあまあ、ご丁寧に送っていただいて、ありがとうございました」 「いえいえ、初めまして。こちらが妹の楓と弟の淳一です。そしてこちらが立花颯太で、私が立花陽一です。どうぞよろしくお願いします。 それと先日は、過分に素敵なお品の数々を頂き、みんな大変喜んでおりました。お気遣いありがとうございました。両親もとても喜んでおりました」 「まあ、そうですか? それは良かったです」 颯太が俺をつつき、花とシャンパンを出してくれた。 「これはほんのご挨拶代わりなんですが……お花とシャンパンです」 すると今度はお父さんの方から、 「ほほう、お気遣いしてくださって申し訳ないですね」 俺は淳一と楓に目くばせした。 “挨拶しろよ”の合図だ。 淳一が「今日は遅くまで紀子さんをお借りしました。お待たせしてすみません」 すると、友則さんが笑って言った。 「立花さんが新上橋の料亭に連れて行ってくださってね。お父さんも“お世話になってます”と言われてびっくりしたよ」 「あ、そうなんだ。バレた?」 アハハハと笑っていた。 俺、この人好きだなと思った。 「では夜も遅いので、これで失礼いたします」 そうして早々に辞去した。 *** その後、少しだけ颯太の家に寄った。 颯太がメールをしてくれていて、小林さんが出てきた。 「こんばんは、遅くにすみません。お陰様でこの縁談がまとまりそうです。ね?」 と淳一と楓に振る。 昨夜、“ちゃんとお礼を言えよ”と言っておいた。 「小林さん、本当にありがとうございました。お陰様で二人とも、このままお話を進めていきたいと思っています。ねっ、楓もだろ?」淳一がお礼を言うと、 「はい。すごくいい感じの方でした。お会いできて本当に幸運でした。ありがとうございました」 よし、楓もお礼を言った。これでいい。 「これ、少しですが気持ちです。シャンパンでも飲んでください」 「ええ? いいんですか?本当にこんなにうまくいくなんて奇跡ですね。 なんて素敵なご縁なんでしょうねえ。わざわざありがとうございました」 そういうわけで立花家を失礼した。 もう颯太も眠そうだったし、今日は頑張ったな。

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