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第101話 三上家サイド・紀子編
淳一さんたちを見送ったあと、私はもう興奮が収まらない。
誰かに言いたくてたまらないもん。
「ネネ、SP見た? すごかったよねえ~! 初めて見たよ。まるで政府の要人みたいだったよねえ~」
お母さんも同じように大興奮。
「ホントホント。もう驚いちゃった。紀子もすごい人とお見合いしたんだねえ~。ラッキー!」
するとお兄さんが、
「もうお母さんのほうが舞い上がってるよ。お父さん、なんとかしたら?」
なんて言ってくる。
私は不満。
お兄さんだけ冷静ぶってるけど、バレてるぞ。
「でもさ、紀子だってすごく舞い上がってたんだよ。京都の高級旅館みたいな料亭に案内されるし、立派なお座敷でご馳走が出るし、僕もびっくりしたんだけどね」
また言いつけられた……。
「ほう~、それはそれは。立花さんのおかげでいい体験をしたんじゃないの?」
「でもまさか、お父さんがお得意さんだとはねえ~。いや~、行かなかったら永遠に知らないところだったよ」
良いぞ良いぞ、行け行け友則!
「ははっ、お父さんを見直したか?」
へ……余裕だったわ。
「そうだ、お母さん。またお隣さんに自慢したでしょう? さっき二階の窓からずーっとこっち見てたよ」
「ああ~俺も見たよ。いいんじゃない? 事実なんだからさ。見せとけば?」
父が余裕を見せる。
「いや、紀子。夜分にさ、ピカピカ光る黒塗りの外車にSPが何人いた? 誰だってびっくりして覗くさ。どう見ても政府の要人だよ。でなければ大事件だよ。それに玄関先で喋れば近所中に響くんだから、聞かれてもしょうがない。そりゃ誰だって見るさ」
「だってお兄さん、しょうがないと思わない? お母さんが喜んじゃってさ。花束までもらっちゃったんだよ。すごくない? おまけにシャンパンだよ。
なんてイケメンで素敵なお兄様なのかしら?」
「お前が結婚するのは弟のほうだからな。わかってるのか? 淳一君だってなかなか整ってるぞ」
「はーい、わかってまーす」
「もう、お父さんまでそんなこと言うから、お母さんがあっちこっちに自慢するんだよ」
さすがのお兄さんもお父さんに言いつけてる。
「そんなもん痛くも痒くもないさ。それにしても立花颯太君の旦那さんだろう? 隣にいた淳一君もなかなかいいけどさ、お兄さんもすごく品のいい人だねえ。男前だし、さすが医者だけあるよ」
「そうだったね。料亭でもそんな感じだったよ。自然体なのに判断が早いんだよね。本当に男前な人だった。それに正直だなって思った」
「ふ~ん。友則がそう言うなら間違いないな」
「でしょう? 私も写真を見ただけでそう思ったのよ。これで大学の同窓会に行っても自慢できるわ。ふふ」
と母。
「ところで友則、肝心の楓さんはどうだったんだ?」
「ふふふ……」
思い出したように笑っている。
「なに? お兄さん気持ち悪い。どうせもう好きになったんでしょう?」
「ほら、ポシェットをあげたでしょう? そしたらすごく喜んでくれたらしいんだよね。それで“お兄さんが興奮してた”って言ったら、すごく怒っちゃってさ。“恥ずかしいよ”なんて言って泣きそうになってた。あとは俯いちゃってさ。
僕のこと、ちょっとは意識してくれたんだなあって思ったよ。明るく闊達な人って聞いてたけどさ、かわいいなあ~って思ったんだよね」
「ほほう~、つまり決まりってことかな?」
「うん、まあね。ちょっと射抜かれたよ」
「え? お兄さん早すぎ」
「あはは、うらやましいか?」
「でも一生の伴侶なんだからな。向こうは良いおうちで理想的だけどさ、お互いの価値観が合わないとアウトだからな。それにお前たちはオメガだから、失敗したら取り返しがつかないぞ」
「うん、わかってるって」
また言われてしまった。
「それと紀子。今度からやりくりを覚えないと離婚されるぞ。
いくら医者でも給料は決まってるんだから、その中でやりくりしないと。
お金は貸さないからな。お母さんも友則も紀子に貸したら駄目だ。
紀子のためにならん。それに淳一君にも迷惑だ。
返品されるぞ。これだけは釘をさしておくからな」
「はーい」
言われちゃった……。
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