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第102話 佐久間家サイド・楓編
陽一兄さんたちに送ってもらって帰ってきた。
「ねえ、どうだったのよ? 聞きたくてしょうがなかったのよ」
母が待ちくたびれていた。
「なんだか知らないけど、楓が拗ねてるんだよ」
「もう、お兄さんまで言いつけなくてもいいでしょう?」
「何だ、早く言いなさい」
父が促す。
「だってさ、陽一兄さんが、私がポシェットもらって興奮してたって友則さんにバラしたんだよ。死ぬほど恥ずかしかったんだから!」
「あははは! 傑作だな。確かにあれは興奮してたな」
「もう、お父さんまでそんなこと言うの?」
「楓、それで友則さんが何か言ったの?」
「言われてないけどさ……でもすごい恥ずかしかったんだもん」
「フフフ、相当意識してるな。つまり気に入ったんだ?」
「知らない。もう私、嫌われたと思う」
「いや〜ねえ。そんなことで嫌いになんかならないわよ。可愛いなって思われたんじゃないの?」
母がフォローしてくれた。
「ほんと?」
「そうだよ。いつもの楓らしくないなあ〜。さては友則さんに恋をしたのかな?」
今度は父がからかってくる。もうヤダ。
「知らない。もう、その名前は禁句にする」
ふふふ、と淳一兄さんが笑った。なんだよ。
「兄貴はどうだったの?」
「俺は最初から決まりだよ。かわいいじゃん。お父さんもお母さんもそう思ったでしょう?」
「うん、確かにかわいいね。いいんじゃないの? オメガのかわいい人なんて、そうそういないぞ。大事にしないとな」
「うん、そうする」
「あ、お兄さんだけ良いこと言われてる」
「楓もだぞ。友則さんが良かったんだろう? 素直に言えばいいじゃないか。拗ねてると可愛くないぞ」
「どうせ可愛くないです」
「しょうのない奴だ」
「はいはい、分かりましたよ。二人とも決まりでいいのね? 後で嫌だと言っても遅いわよ。オメガの人を傷つけたら駄目なんだから、わかってるの?」
母から念押しされた。
私は自信がなかったから、なんとも返事ができなかった。
「もう寝る」
携帯を手に取ったら──え? あれ?
大急ぎで開けた。友則さんからだ!!
<楓さん、すごく可愛かった。ぜひ僕とお付き合いをしてください>
「え、え、えーーーーっ?」
バンザーーイ!!
飛び上がってしまった。
家族がびっくりして私を見た。
「えへへへ、友則さんが私のこと可愛かったって……お付き合いしてくださいって言われちゃった!! あははは」
「はあん、そうかい。そりゃよかったね。じゃあお母さん、楓は決まりみたいだよ」
「ふっ、そのようですね。じゃあ二人一緒に結婚式するしかないですよね? お父さん」
「ああ、そうしよう。二回もやるのは無駄だよ。一回で済ませよう。向こうも兄妹だからな」
「でも交際期間がいるんじゃないの? 見た目と違う部分があるかもしれないからさ。楓も有頂天になってないで、冷静に見ろよ」
「もう〜、兄貴は自分のことだけ考えてて。私は我が道を行くから」
「まあ、好きなようにやるさ」
父が達観したように言った。
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