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第103話 立花家サイド・陽一編

紀子さんや楓たちを送って帰宅したら、もう夜の10時近かった。 颯太は少し疲れているようだったが、なんとか大丈夫そうだ。 大分体力が戻ってきている。 「先生、なんか甘いもの飲みたい」 「何が良いの?」メニューを見ていた。 「じゃあ、ココアがいいな」 「チョコレート入れる?」 「うん、入れてほしい」 颯太好みに甘くして 「はい、どうぞ」 にんまりとしてカップの中をのぞき込むときの、大きな目がふわっと丸くなる。 長いまつげがココアの湯気に濡れそうで、思わず見とれていた。 フーフーと息を吹きかけながら、そっと口をつけて少しずつ飲む。 「甘くておいしい……」 「今日は颯太も頑張ったね」 「えへへへ。でも楓姉さん、面白かったね」 「うん?」 そんなことがあったかな?と思っていると── 「もう〜先生が変なこと言うから、楓姉さん怒っちゃったんだよ」 「あ、へへへ、そうだったな。あれはおかしかったよ」 しかし、颯太はあくまでの楓の味方だった。 「きっとまだ怒ってるよ。慰めたほうがいいんじゃない?」 「そうかな? でも事実だろう? 友則さんにとっては良い話だったと思うんだけど……」 「友則さんって、なかなか素敵な人だったね。でもオメガって聞いてたから、もっと小柄な人かと思ってた。でもなんかさあ……楓姉さんをじっと見てたよ。気に入ったんじゃない?」 「だろう? 俺もそう思ったんだよ」 「きっと決まるような気がする」 颯太の勘なら間違いない。 「それにしても楓があんなにしおらしくなるなんてなあ〜。想定外だよ。借りてきた猫みたいだったよな。あれは永遠に語り継がれるぞ」 「え~? なんだか楓姉さんがかわいそうになってきた。 もう先生って……全然、楓姉さんのこと分かってないんだもん」 「はい、ごめんなさい。認めます」 「颯太、淳一のほうは決まると思うか?」 「うん、絶対決まると思う。だって淳一兄さん、紀子さんしか見てなかったもんね」 「だよな? そうか……やっぱり決まるのか‥‥‥」 「え? なんかまずいことでもあるの?」 「いやね、まずいわけじゃないんだけどさ。 三上家は老舗の家だから、淳一も結婚するなら変なところには住めないんだよ。 多分……いや、絶対このマンションを貸してくれって言うと思うよ」 「え? じゃあ俺たちはどこに行くの?」 「それなんだよねえ……。最悪さ、佐久間の実家に住むことになってもいいか?」 「うん、いいよ。みんなで住むのは楽しいと思う」 「そうか? 颯太! なんてかわいいヤツなんだ!」 我慢できず、手を引っ張って抱きしめてキスしまくった。 「もう〜先生、苦しいよ〜」 「颯太がかわいいこと言うからだよ。早く一緒に寝よう」 うん、と頷いた。 「颯太、急ぎ風呂に入るぞ」 また颯太の手を引っぱって浴室に向かった。 こうなったら実力行使だ。さっさと服を脱いで浴室に入った。 颯太がむふふふと笑っていた。 身体を洗いながらも、つい抱きしめるのであまり進まない。 「ベッドでも抱きまくるからな」 「もう~、知らない......」 洗うのも雑に済ませたら、湯船につかった。 しかし、颯太の目が半分しか開いてない。やばい......。 それでも眠るまいと時々目を大きく見開いていた。 今日はろくに昼寝をしていないもんね。 「颯太、もう上がるよ」 「う、ん」 だんだん緩慢になって来た。 白い寝間着を着せてベッドに入った。 「いつものように抱き寄せてキスをしたけど......」 反応がだらんとしていた。寂しいな。 動かせ舌を‥‥‥まあ、内心ちょっと思っただけさ......。 俺は海の底に沈んだ。 やっぱり元気のある時じゃないと颯太は無理だな。 まあ、一生に一度の見合いだから、今日はしょうがないか。 付き合ってくれた颯太を抱きしめて眠った。

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