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第106話 チョーカーのダイヤ

それから、颯太のヒートは嘘のように徐々に収まった。 全部で四日間か。 ただ、颯太の身体の消耗は激しく、普通に起きられるようになるまで三日かかった。 久しぶりにメールを開けると、家族からのメッセージが山ほど来ていた。 内容をまとめると、 「どうだった?」 ということ。 返事は「まだ不明」。 月曜、バース科の友永先生の診察を受けた。 恥ずかしくて死にそうだったが、先生は颯太のうなじの傷を見て、 「ちょっと拝見」 と言いながら、俺をちらっと見てニヤけていた。 くそーー! 俺は視線を外して後ろを向いた。 穴があったら入りたい。 「良さそうですよ」 続いて、さっき済ませた血液検査の結果をパソコンで確認していた。 「ははあ〜、いいじゃないですか。ちゃんと番になってますよ」 颯太がにこっとして俺を見る。 俺もうれしくて、ニヤけたくなかったのに抑えられなかった。 「ありがとうございました」 「もうホルモン療法は要らなくなりましたね。身体の栄養状態も良くなってますし、もう大丈夫ですよ」 御礼を伝えて診察室を出た。 会計を済ませると、そのまま院長室に颯太を連れて行った。 そして抱きしめた。 ぎゅ、ぎゅ、と止まらない。 「ふふ、もう〜先生、苦しいよ〜」 「ははは、ごめん。興奮しちゃった」 バッグからチョーカーを取り出す。 「颯太、お待たせしました。チョーカーを付けてあげるね」 「うん」 颯太の表情がぱっと明るくなる。 まだ絆創膏は取れないが、その上からそっとチョーカーをつけた。 「これはね、俺と颯太の指紋認証でしか外せないからね」 「うん。分かった」 鏡の前に行って眺める。 「ダイヤがきれいだよね? きらきら光ってる」 颯太がうれしそうに言うので、背中から抱きしめた。 「本当にきれいだね。目立ちすぎちゃうかな?」 「俺、見せて歩いちゃうもん」 でも今日はタートルネックだ。 「じゃあ、家族が心配してるからメールするね」 楓に連絡して、皆に伝えてもらうよう頼んだ。 あとは上川さんに“今から会社に行く”と連絡。 「颯太、今日は白石先生来れるかな? 急だからさ」 「う〜ん、また大学休んじゃったからどうしよう。来てくれたらいいんだけど」 「じゃあ、勉強道具を持って会社に行こう」 その後、家に寄ってから会社へ向かった。 会社に着くと、上川さんと山川弁護士がすぐにやって来た。 ニヤニヤしている。 「あのう……もしかして……ですか?」 上川さんに言われ、俺たちは思わずニヤけてしまった。 颯太がタートルネックを少しずらしてダイヤを見せる。 「んまあ〜、すごい!」 また二人で笑いが止まらなくなる。 「いや〜これはめでたいですねえ。でもちょっと刺激的ですね。これから仕事に集中できるかなあ?」 そう言い残して、山川弁護士はさっさと去っていった。 笑った。 「おめでとうございます。広報スタッフが今か今かとじれて待ってましたよ。呼びますか?」 俺は颯太を見る。 「はい、ではお願いします」 颯太がにこやかに答えた。 五分もしないうちに広報の五人がやって来た。 「なんか……おめでとうございまーす!」 と拍手。 恥ずかしくていたたまれず、俺は顔を両手で隠して後ろを向いた。 「あのう、聞きましたよ。ちょっと見せてくださいよ」 山下さんに言われ、颯太がまた服をずらしてダイヤを見せる。 「きゃーーーっ!」 その声に反応して、SPがいきなりドアを開けた。 「え? え?」 広報の皆がびっくり。 「ごめんなさい。なんでもないです」 俺が言うと、SPがニタリと笑った。 ……なんで笑うんだよ? 聞こえてたのか? 恥ずかしいの極みだ。 「その素敵なダイヤ、HPで公表しますか?」 「まさかねえ。颯太はどうなの?」 「うん? もちろん。さりげなく、でもしっかりダイヤが見えるように撮ってね」 どっと笑いが起きた。 「じゃあ、外の景色をバックに撮りますか?」 「はい、お願いします」 颯太はシャツに着替え、ダイヤがよく見えるように撮影してもらっていた。 俺は恥ずかしすぎて無理。 その後、上川さんから午後に白石先生が来てくれると聞いた。 今日は顔を合わせないようにしよう。 スタッフたちが帰ると、 「颯太、久しぶりだからホテルで食べようよ。栄養を摂らないとね」 くすっと颯太が笑う。 「俺、ステーキを食べようかな?」 「うん、一番高いヤツを食べようよ」

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